2次元CAD普及とともに、建材・設備メーカーなどがCADデータの提供サービスを充実させていったが、BIMについても同様の動きが顕著となった。継続して追跡すべきテーマの端緒としてLIXILの取り組みを報告する。
□設計者と協働で一品生産的に製造するビル用アルミサッシなどからBIMデータ開発に着手□
4月8日、BIMソフト「Revit」(オートデスク社)のFacebookページ「Autodesk Revit Japan」が『LIXIL ビジネス向けサイト(biz-lixil.com/)でBIMデータ(Revit)の提供を開始』と一報した。LIXILがBIMデータ(パーツ)提供の試行錯誤を始めたのは、設計事務所や建設会社がBIM導入に舵を切り始めた2010年頃に遡る。
業界最大手の建材・住宅設備機器メーカーであるLIXILの取り扱い製品は広範囲で多岐にわたる。先行的に設計事務所、建設会社からの要請を受け、カーテンウォールやビル用アルミサッシのBIMデータ(パーツ)の開発を開始した。
「一品生産的要素の強いカーテンウォールやビル用アルミサッシでは、以前から設計者の要望を受けて製品化するケースが多かったが、BIM導入の機運が高まる中での新たな顧客ニーズを把握するためにも、その分野のBIMデータ(パーツ)から開発に着手した」(LIXILジャパンカンパニービル事業部エンジニアリング営業部首都圏グループ担当部長・西村雅雄氏)
□BIMソフトを用いて開口部(窓)を設計する際の思考やプロセスまで追随する機能も追求□
先行して開発に着手したカーテンウォールやビル用アルミサッシのBIMデータ(パーツ)は、顧客との協議などを経て、BIMソフト「ArchiCAD」(グラフィソフト社)対応のものとし、ビル用アルミサッシ「E-SHAPE Window」を対象とした。
2次元CADのデータ(パーツ)では、成果物として図面をいかに作図するのかが求められたが、『形態情報:Modeling』と『属性情報:I=Information』を包含するBIMデータ(パーツ)では、設計者がBIMソフトを用いて開口部(窓)を設計する際の思考=モデリングや設計プロセスまで追随する機能が求められる。
「E-SHAPE Window」のBIMデータ(パーツ)は、BIMソフト「ArchiCAD」のGDL(Geometric Description Language)オブジェクトで、設計者は基本的なコンポーネントを基に、必要に応じて、形状などを自在にパラメトリック変更することが可能となる。
LIXILでは、このような一品生産的・受注生産的なBIMデータ(パーツ)についても、顧客と協働しながら継続して開発するべく体制整備を進めている。(グラフィソフト社「ARCHICAD BIM事例レポート LIXIL」を参照)
□トイレなどの標準・規格品のBIMデータ開発でも必須の形態情報と属性情報のルール付け□
「LIXIL ビジネス向けサイト」で提供を始めたのは、一品生産的なカーテンウォールやビル用アルミサッシとは異なるトイレなどの標準・規格品だ。ここでも作図が前提の2次元CADデータ(パーツ)とは趣を異にするBIMデータ(パーツ)ならではの課題が潜在する。
『形態情報:Modeling』では、“軽く”稼動する適切なデータ容量とLODなど縮尺のルール付けをいかに設定するのかであり、『属性情報:I=Information』では、標記の「質(ルール)と量(範囲)」の設定などだ。これら標準・規格品においても、LIXILでは顧客との協働を加速化している。
◇Revit用のBIMデータ(パーツ)から提供開始
▽トイレ:パブリックトイレ・住宅トイレ・小便器
▽洗面化粧室:洗面器・手洗器
▽アクセサリー:パブリックアクセサリー
▽各種施設用設備機器:幼児用施設器具・バリアフリー対応器具・その他施設用器具。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)