設備(工事会社)サブコンとしての高砂熱学工業のBIM運用の現状の「課題」と今後の「可能性」を検証し、報告する。
□工程上流との協働+設備工事全般を司る設備サブコンの実務に即した運用が必須の設備BIM□
設備サブコンの業務は、上流工程との協働のもと、空調・衛生・電気設備の施工内容を決定するさまざまな検討や合意形成に始まり、それらの結果を網羅した施工図作成、施工計画立案、施工実施に至るまで多岐にわたる=図:「設備サブコンの業務」参照。
そのため設備BIMの導入と運用の要諦は、可用性、流通性に優れるデジタル情報(3次元建物モデル)のメリットを最大限に生かし、それら業務の効率性の向上と組織内連携の高度化にある。
一方で、上流工程から設備サブコンに提供される建物(躯体)データは、多くの場合、建物モデルとは似ても似つかない2次元図面(データ)であり、3次元建物モデルによる意匠系BIMとのデジタル連携もようやく緒についたばかりだ。
□干渉チェックで思い浮かぶCAD普及期に見た空調・衛生・電気等を合算した真っ黒な画面□
BIMという呼称が一般化する以前から、設備CADは3次元モデルの運用を前提として発展してきた。製図CADの主目的が2次元図面作成と効率化だった段階から、設備CADでは、複雑な3次元形状をもつ空調・衛生・電気設備機器を3次元モデル化し、機器相互間の干渉チェックをいかに実現するかが大きな課題となっていたからだ。
干渉チェックといえば、CADの普及期に見た「真っ黒な画面」が思い浮かぶ。「真っ黒」なのは建物(躯体)データと共に空調・衛生・電気設備の各図面を全て重複表示していたからで、コマンド切り替えすると、躯体+視認(干渉チェック)したい対象設備のレイヤーが合算表示された。2次元図面(データ)での干渉チェックだったが、それでも手描き図面での視認性は大きく凌駕していた。
□3次元モデルを意識した運用経験と歴史を基にベンダーと設備BIMを共同開発し今に至る□
それらの状況もあり、高砂熱学では、当初から3次元モデルを前提とした設備CAD運用を目指し、1984年にミニコンベースの海外製3次元CADを導入した。当時としては先駆的なシステムで、3次元モデルからの施工図作成などに援用したが、操作も難しく、処理速度も遅いなどのことから実験的な運用にとどまった。
90年代前半までは施工図作成を主目的にPCベースの設備CADを運用、ダクトCAD:CAMへの取り組みとともに配管プレハブ化ソフトも自社開発している。
そこに至る3次元モデルを意識した設備CAD運用の経験と歴史などを背景に、90年代には技術者が実務運用できる本格的な設備CADをソフトベンダー(ダイテック)と共同開発し、設備BIMともいえる、現在の設備CAD「CADWe’ll Tfas 8」(ダイテック製)へと至る。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)