BIMの課題と可能性・127/樋口一希/「ARCHICAD 20」発売

2016年9月15日 トップニュース

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 グラフィソフトジャパンでは、BIMソフトウエアソリューションの最新版「ARCHICAD 20」を9月28日から販売すると発表した。BIMが「離陸後、5分経過段階」を迎える現況下、「Fresh look at BIM(BIMを新たな目で)」をテーマとして掲げ、市場へのより強いコミットメントを表明した。「ARCHICAD 20」を「使いやすさ」と「情報管理」の側面から概説する。


 □既存ユーザーにも配慮したユーザーインターフェースの改善+より機能拡充のお気に入り□


 「使いやすさ」追求は、ユーザーインターフェース改善を中心に行われた。約7000に及ぶアイコンは新たにデザインされ、4Kディスプレイにみられる高解像度化へも対応するべく、ベクトルグラフィックス形式へと一新された。

 ディスプレイ上の作業領域・背景をより広く確保したいとのユーザーからの要望を受け、不要な線表現、ボックス、それらの隙間までを精査するなど、ディスプレイ上の表示、機能全般を徹底的に見直している。一方で、バージョンアップに伴い、既存ユーザーが操作面で戸惑わないよう、各種要素の配置位置は従前通りとしている。

 「使いやすさ」改善で注目できるのは、床、壁、天井、開口部材などを3次元モデルとして作成し、登録、繰り返し再利用する「お気に入り」の拡充だ。基本的な部材が数多く登録されたのに加えて、3次元モデル構築とともに自動作成されるアイコンでの視認性向上、2次元図面表現での確認、自由な階層化設定などを実現した。「お気に入り」の拡充は、3次元モデルの管理運用を容易にし、組織運用時のテンプレート管理などを通じて、BIMマネージャー支援に役立つ。

 その他にも、従来は何段階かを要したオペレーションをワンクリックで可能にするなど、きめ細かな配慮が見られる。


 □BIMの情報=I:Informationをシームレスに共有・管理・運用しM:Managementへと戦略展開□


 「情報管理」では、BIMの情報=I:Informationに最大限、フォーカスしている。BIMの情報=I:Informationは、個々の3次元モデル自体の『形状データ』=M:Modelingと付属的に関連付けされるコスト・メーカー名・製品コード・性能(耐火・断熱・遮音)・WEBサイトなどの『メタデータ』=Metadataに大別できる。今回のバージョンアップで最も注目できるのは、それら情報=I:Informationをマイクロソフト社のExcelに準拠した表形式で保存・データベース管理できることだ。

 図は、建物や部屋、設備・備品などの施設台帳を登録、検索、表示し、インターネット上で共有・管理できるWEBシステム「FINE-WEBS」(FMシステム)と「ARCHICAD 20」をタブレット端末上で稼動する「BIMx」を介して連動する事例だ。このように、BIMの情報=I:Informationは、ネットワークを介して他システムと瞬時に連動でき、シームレスに相互に可視化領域を拡張できる。

 BIM=デジタル情報の流通性、可用性などに依拠して工程前期へと作業を前倒しするフロントローディンクが喧伝されたが、高度な情報の透過性が実現すれば、情報=I:Informationは、その発生時(源)である工程ごとに構築するオン・プロセス・ローディング(On Process Loading)も検討すべきではないだろうか。「ARCHICAD 20」のプレスリリースにあったBuilding Information Managementに象徴されるように、今後は、情報=I:Informationをいかにマネージメントするのかが問われていく。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)