「BIMデータを使用した建築確認申請手続きによる国内初の確認済証を交付」を実現したフリーダムアーキテクツデザインの今後に向けた戦略を探る。
□3次元モデルで考え設計力向上+製図(図面出力)を削減する当初のBIM導入目的は達成□
木造在来工法向けシステムではなく、大規模建築向き(と思われがち)のBIMソフト「Revit」を導入した逆説的ともいえる選択の中に、設計行為が作業としての製図に堕している現状を改革し、建築設計事務所本来のあり方を再構築するとの強い意向が感じられた。
設計者にとっては、施工図レベルのLOD(詳細度)で3次元モデルを作成し、製図の自動化を進める(図面も描きすぎる)など木造在来工法向けシステムの方が重厚長大であった。BIMソフトでは、3次元モデルのLOD(詳細度)を工程の進捗に合わせて設定できる。設計者は、企画設計段階の低次なLOD(詳細度)をベースに、3次元で考え始め、組織的には作業としての製図(図面出力)を最終段階での確認申請用図面に絞り込むことを模索していった。
□4号建築物の製図(図面出力)を確認申請に集約する合意のもとで実現したBIMモデル申請□
住宅性能評価センターが着目したのは、フリーダムアーキテクツの図面出力を確認申請用図面に集約する挑戦であった。協議を続ける中で、審査対象が4号建築物であるため、確認申請用図面の枚数(案内図、配置図、求積図、平面図、立面図、断面図)を限定できること。BIMモデルからの図面出力用テンプレートを開発すれば、他システム開発も不要で、電子署名「F-2 Web」もそのまま利用できることなどが明らかとなった。
図にあるように、フリーダムアーキテクツは、確認機関の電子署名「F-2 Web」を用いてセキュリティも確保しつつ、BIMモデルを送信、申請手続きに着手する。確認機関ではBIMモデルから6枚の図面=案内図・配置図・求積図・平面図・立面図・断面図をテンプレート出力して審査する。最も重要なのは、BIMで図面間の整合は確保されているとの合意を前提に、確認機関では視認による図面不整合のチェックが不要であり、フリーダムアーキテクツでは図面出力が不要となる点だ。
□BIMモデル=デジタル情報の優位性を基に顧客ニーズ分析や新規市場創出も視野に入れる□
顧客との合意形成の過程で生まれた約2000パターンに及ぶ間取り(プラン)も整備済みでマーケティングに援用している。間取り(プラン)を基に、顧客ニーズを分析すると、共有スペースと考えられていたリビングに代わり、ダイニングの重要度が増していた。働き方改革の号令と逆行し、平日、世帯主は不在で、母子はダイニングに憩うというわけだ。
設計者には、今にセンシティブなマーケティング能力と、社会的なニーズの変化に柔軟に対応する設計力が求められている。顧客ごとにBIMモデルを維持、管理することで将来の改修設計のニーズにも即応できる。設計者は、BIM導入が現業の革新とともに建築設計事務所としての役割を拡張することに気付き始めた。
一部、構造計算が免除されている4号建築物だが、設計の質を上げ、建築主の信頼を得るため、軸組・構造図のBIMモデル化も行っている。構造設計事務所との協働による4号建築物および4号以外の建築物の構造計算とのBIM連携にも着手した。住宅設備メーカーとの機器・部品モデル作成に関する協議も進んでいる。センセーショナルな「国内初」のコピーとは趣を異にした、現実的でクレバーなフリーダムアーキテクツの挑戦を今後も追跡していく。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)