BIMの課題と可能性・135/樋口一希/現場作業事務所でのBIM運用・2

2016年11月24日 トップニュース

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 竹中工務店の信濃橋富士ビル建替工事(大阪市西区西本町)の作業事務所。基礎工事が終わった訪問時には、最上階の打ち合わせを経て、施工モデルの調整も全て完了していた。建設会社として優位性を最大限に発揮できる設計施工案件のBIM実施例として報告する。


 □BIM導入を最適化するために生産現場(作業所)内の要員配置と業務分担の再構築を実施□


 ミッションは、前項で報告した図(重ね合わせ検討会の推移)の『基本設計から生産情報を取り込み、着工後初期段階で施工モデルの調整を完了』。作業所の主導のもと、サブコンなどの関係者の全員参加で施工モデルを作成し、実際の施工への援用を実現した。

 大量生産が前提の製造業の生産現場(工場)がオーディナリー(常設的)であるのに対して、一品生産の建築物を前提とする建設業の生産現場(作業所)はテンポラリー(一時的)で竣工後は影も形もなくなる。建築規模で要員も変動するし、サブコンなどの協力組織も流動する。

 製造業と比較して情報のデジタル化には向かない、建設業の生産現場(作業所)へのBIM導入をいかにして最適化するのか。竹中工務店では、BIM導入の業務フローを先取り分析し、新たな組織論ともいえる、作業事務所内の要員配置と業務分担の再構築を実施した。


 □施工図担当と兼務のBIMマネージャーが中心となり施工モデルの統合・管理・運用を実施□


 信濃橋富士ビル建替工事の概要は、敷地面積475・42平方メートル、建築面積356・72平方メートル、S造(地下一部RC・SRC造)地下1階地上11階塔屋1階建て延べ床面積4014・19平方メートル。作業所長を含めて全11人で運営されている。

 BIM運用において最も重要な役割を果たすBIMマネージャーは1人が常駐している。

 特筆すべきは、作業所経験が豊富なベテランの施工図担当者が兼務する点だ。設計部門と意思疎通しつつ、サブコン、協力会社とBIM協働を進めていくBIMマネージャーは、建築とコンピュータの領域に跨がり、設計と施工の橋渡しをする新しい職能といえよう。

 BIM運用の主要インフラは、BIMソフト「ArchiCAD」とモデル間の干渉チェックに用いる「Solibri Model Checker」だ。BIMマネージャーは、協力会社が用いる各種のアプリケーションとIFCフォーマットを介して施工モデルを統合し、管理、運用する。

 なお、デジタル運用のサポートデスク的役割を果たすBIMコンシェルジュは大阪支店に常駐し、大阪、広島、九州の全プロジェクトの運用サポートを務めている。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

 【前稿訂正】17日付10面掲載の第134回に使用した図版に誤りがありました。右下の重ね合わせ会第13回と第15回に「地下鉄骨」とあるのは「地上鉄骨」です。おわびします。