集合住宅の賃貸事業と開発事業をコア事業として展開するレオパレス21では、日常業務の自動化・効率化を目的にRPA(Robotic Process Automation)導入の一環として日本電気の業務自動化ソフトウエア「NEC Software Robot Solution」を本社8業務において導入、作業効率化を目指す。遅れてきた建築ともいえる不動産分野でのデジタル運用の今後を探索する。
□RPA導入と運用による業務自動化によって8業務で73・1%の日常業務効率化を達成□
生産年齢人口が10年後には500万人を超える減少が見込まれ、さまざまな産業において人手不足が問題となっている中、デジタルによる新技術導入による働き方改革は急務だ。
レオパレス21の本社部門では、各種システムのデータ入出力、集計業務といった日常業務に月間1612時間の作業時間を要しており、業務効率化が課題となっていたがRPA導入による業務自動化によって業務効率化と正確性向上も実現した。RPA導入に適した8業務で運用、73・1%の業務効率化を達成している。作業自動化が見込める356業務を検証した上で順次RPAの導入を推進し、月間1000時間の作業時間削減を目指している。
□高齢者見守りシステム・アパートの駐車場・ごみ出しの遠隔管理・AI店員の実証実験実施□
以前からレオパレス21ではデジタルによる新技術導入に積極的に取り組んでおり、17年9月には介護施設「あずみ苑グランデ草加」で利用者見守りサービスの一環として、介護業界初となるIoTとLoRa技術(※)による「高齢者見守りシステム」の実証実験を開始している。
18年3月からは集合住宅入居者の困りごと最上位である契約駐車場の不正駐車および時間外のごみ出し・不法投棄を解消するために、IoTを活用した賃貸アパートの駐車場とごみ置き場の遠隔監視に関する実証実験を開始した。
2月からはAIがチャット形式で顧客の部屋探しを支援する「バーチャルデスク」の導入も開始している。「バーチャルデスク」WEB版ではAI店員が顧客を出迎えて対話を進めていく。スマートフォン向けアプリ版ではテキストチャットだけでなく音声チャットにも対応しており、店頭で相談している感覚で物件を探すことができ、雑談にも応える。「バーチャルデスク」導入によって深夜帯や休日、店舗に出向くのが距離的に困難な顧客の部屋探しを支援することが可能になった。
※LoRa技術=低消費電力、小データ量、広域守備範囲を特徴とする無線方式(LPWA:Low Power Wide Area)の一種で最大伝送速度は250kbps程度、伝送距離は最大10km程度。
□日常業務を仮想ロボットに任せてデータ分析や戦略構築などの付加価値の高い作業に集中□
RPA(Robotic Process Automation)は仮想ロボットのこと。「NEC Software Robot Solution」は画像認識技術とマウス・キーボード操作を組み合わせることによって自動化対象のパソコン、サーバーに対してソフトウエアロボット(仮想ロボット)を導入できるシステムだ。
プログラミングのスキルがなくとも容易に日常業務を仮想ロボットに任せることが可能で、既存システムに手を入れずに自動処理が実現する。これによって、従来、人間が担ってきた表計算ソフトなどを用いる繰り返しの多い単純業務をロボットに任せることができ、人間はデータの分析や戦略の構築などより付加価値の高い作業に集中できる。これらレオパレス21の動向からAI、IoTなどの最先端のデジタル技術を活用する不動産テックの今後の方向性を俯瞰することができる。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)