デジタルで建設をDXする・54/樋口一希/BIMデータと点群データの重畳表示

2022年4月7日 ニュース

文字サイズ

 シリコンスタジオ(東京都渋谷区)は村本建設のDX戦略の一環として、BIMデータと点群データを重畳表示するソリューションを開発し提供した。

 □“As build”に建物を点群データとしてデジタル空間上に再現し管理運用や施工検査に援用□
 点群は英語ではpoint cloudと表記する。コンピューター上の点の集合体(群)のことで、3次元空間上の位置情報である直交座標(xyz)や色彩情報などを持つ。3次元レーザースキャナーなどで現実世界をスキャン、計測して点の集合体としてデジタル空間上に再現する。点群を取り巻く技術革新は建設業においても急速に進化している。
 米国のBIM関係者から点群データの取得機器を紹介された際に耳にしたのは「As build」という言葉だった。直訳すれば「(建っている)建物そのままに」とでもなる。
 既築建物を管理運用し、改築して拡張・転用する際には、リアルな現場に則した、正に“As build”な正確かつ完全な現況情報が必要となる。その際に用いるのがAs build関連のソフトで、BIMソフトへの点群データの取り込みをサポートし、リアルな現実世界の既築建物などをデジタル空間上にAs buildで再現する。
 BIMデータと点群データの重畳表示とは、写真のように、BIMによる3次元建物モデルと現実世界の建物をデジタル空間上で重ね合わせて表現することだ。既築建物のデジタル化と合わせて、本稿のように進行中の施工現場の現況調査や監理にも援用できる。

 □BIM+点群の重畳表示による進捗(しんちょく)管理ワークフローと設計・点群データレビュー環境を提供□
 シリコンスタジオが村本建設向けに開発、提供したBIM+点群データの活用ソリューションは、ユニティ・テクノロジーズ社のゲームエンジン「Unity」とBIMデータを連携し、リアルタイムかつシームレスに3次元建物モデルを表示するBIMビューアー「Unity Reflect」を使用している。
 Unity環境の利用によって膨大なデータ容量となる点群データの軽量化を可能とし、施工現場に対してBIMデータと点群データの重畳表示による進捗管理ワークフローと、多人数・多拠点での設計・点群データレビュー環境を提供している。
 iOS、Android、Mac、Windowsに対応し、パソコン、スマホ、タブレットとデバイスにもこだわらないことから建設業界においても点群データの利用時にゲームエンジン「Unity」の環境を用いる機会が増えている。
 施工現場は遠隔地に分散しており、リアルに、その現場に行かなければ施工状況の確認はできない。進捗管理ワークフローと多人数・多拠点での設計・点群データレビュー環境の構築によって、設計(BIMデータ)と施工(点群データ)を重畳表示、その間の差異を複数の遠隔拠点から多人数で視覚的に比較、確認できるようになる。

 □写真撮影や寸法計測など施工検査の効率化で横断的な情報共有と進捗確認の精度向上を実現□
 DXの推進によって働きやすい労働環境の実現を目指している村本建設では、全国各地に散らばる施工現場に繰り返し足を運び行う写真撮影や寸法計測などの施工検査の効率化は、リアルな人的往来が制限されるコロナ禍への対応策として取り組まなければならない課題であった。
 BIMデータと点群データの重畳表示による進捗管理ワークフローと多人数・多拠点での設計・点群データレビュー環境の構築によって、現場横断的な情報共有と進捗確認の精度向上が可能となり、作業時間短縮など実利面での効率化が実現する。
 シリコンスタジオ エンターテインメント業界を中心に自動車、映像、建築などさまざまな業界向けにデジタルコンテンツ関連ビジネスを展開している。東証グロースに上場しており、証券コードは3907。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)