デジタルで建設をDXする・58/樋口一希/建設用3Dプリンターの適応技術を実証

2022年5月12日 ニュース

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 Polyuse(東京都港区)は、MAT一級建築士事務所(群馬県吾妻町)による建築基準法に準拠した設計に基づき3Dプリンター施工を実施するのに際して、国内で初の建築確認申請を1月24日付で群馬県渋川市より取得したと公表した。設計データを3Dプリンターによって製造(建設)に直結させるコンピュテーショナル・デザイン援用のユニークな実施事例となっている。
 □建設用3Dプリンターが得意なR形状を含む12個の建築部材を用いて17平方メートル超の平屋を施工□
 施工現場は渋川市に位置し、施工に際しては建設用3Dプリンターで事前に工場製造した部材を現場搬入して組み立てる方式を採用した。造形した部材は、建設用3Dプリンターが能力を発揮するR形状を含む12個の建築部材で構成されており、建屋は横幅約6メートル、奥行き約3~4メートル、高さ約3メートルの平屋となっている。
 10平方メートル以下のコンテナやユニットハウス、タイニーハウスといった規模では建築確認申請が不要とされているが、快適な居住性の確保は困難なことから、サニタリーやインテリアを設置する面積を確保し、17平方メートル超の広さを実現している。
 なお、床面積10平方メートル以下の建築物に関しては建築確認申請が不要だが、建築物としては建築基準を満たし、安全性や快適性を考慮する必要がある。
 □建物は2日で組み立て完了、内装仕上げなどを経て2カ月強の施工期間を約1カ月に短縮□
 建設用3Dプリンターで工場製造した部材は、モルタル素材を充てんして造形することによって密な状態を生み出し、十分な強度を確保している。強度試験なども複数回、実施しており、従来のコンクリート壁に適応される基準強度以上の強度を発現することを確認している。そのため標準的なコンクリート製の外壁と同水準以上の強度を保ち、安全性を検討する上で実施する構造計算での計算値も問題はないとしている。
 造形に関しては、高さ150センチメートルまでの内部空間を充てんする印刷作業に4~6時間程度が必要であり、全部材の製造には10日間程度を要した。基礎打ちは造形期間中に並行して実施した。造形後の建物本体の現地組み立ては2日間で完了、その後に屋根などの組み付け、内装の仕上げなどを実施し、従来、同規模の建屋を建造するのに要していた2カ月強の施工期間を約1カ月に短縮している。
 □海外で先行する建設用3Dプリンターの国内建築への適応技術を実証確立した初の事例□
 建築分野における3Dプリンターの援用については海外での事例が先行しており、3Dプリンターを用いた住宅などの建築物の施工事例も数多く報告されている。一方、国内では建築基準法に適合する形で建設用3Dプリンターを用いてどのように施工すれば良いのかは実証されていなかった。
 このたびMAT一級建築士事務所の協力の下、渋川市で建築確認申請を行い、確認済書を取得したため、3Dプリンターによる施工を実施した。本件は国内初の建築許可を取得した建築物の施工事例であり、海外で先行する建設用3Dプリンターの国内建築への適応技術を実証確立した事例となった。
 Polyuseは2019年に創業、21年に3Dプリンターを適応した国内初の土木構造物や民間の実案件工事を行い、合わせて国土交通省中国地方整備局広島国道事務所の「安芸バイパス寺分地区第4改良工事」でも産官学が連携した実証実験を実施した。国内唯一の建設用3Dプリンターメーカーとして専門性の高い技術者を擁し、高度な開発体制を構築することによって建設業における人手不足解消の一助となるプロダクト開発を遂行している。
 Polyuseは現在、エンジニアチームを中心に人材を募集している。開発現場では多くのパートナー企業や行政・大学研究機関などと共同で事業展開を進めており、最先端の研究開発分野を社会実装していくことを目指している。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)