◇関空~神戸にアクセス鉄道 大阪湾周辺に位置する関西国際、大阪国際(伊丹)、神戸の関西3空港。関西国際空港は2018年台風21号でエプロンが冠水した。その際、強風の影響で空港がある海上の人工島と大阪府泉佐野市のりんくうタウンを結ぶ連絡橋にタンカー船が衝突し、橋梁が大きく損傷。連絡橋が利用できなくなり、乗客が空港に孤立する事態が生じた。 市街地にある伊丹空港は以前から、住宅地への墜落などの危険性や騒音の問題が指摘されている。海上の神戸空港には国際線機能がない。さらに伊丹、神戸両空港は大阪や神戸の都心部へアクセス鉄道が乗り入れていない共通点もある。 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来プロジェクト研究会(藤本貴也委員長)は、関西3空港は施設、運用両面で改善の余地が大きいと分析。「国土造りプロジェクト構想7」として、将来の航空需要を考慮し3空港の空域利用を最適化するよう提言した。 関西国際空港は2期事業の残工事(未整備の北側連絡誘導路と埋め立て未完了部分)の実施だけでなく、沖合に新たな空港島を造成し3本目の滑走路(延長3500メートル)を増設する3期事業を提案している。 今回の提言で最大のポイントが神戸空港の機能強化だ。国際線機能を付加し、24時間運用にするよう提唱した。滑走路は現在の延長2500メートルを3000メートルに延伸。山陽新幹線新神戸駅とアクセスする地下鉄の整備も盛り込んだ。 神戸空港と関西国際空港が約15分で行き来できる海底トンネルの構築も提案。延長約23キロ、外径12・2メートルの複線鉄道として整備した場合、事業費は最大4000億円程度を見込む。 神戸空港~関西国際空港間のアクセス鉄道整備は、空港事業者による民間プロジェクトとして想定。両空港で着陸料を1割程度増やし、利用者1人当たりの空港施設利用料を約300円増やせば、建設コストやその償還費用は回収できると推計した。 国際観光振興機構(JNTO)によると、19年の国際会議開催数は神戸が438回。東京の561回に次いで2番目に多かったものの、関西3空港で国際線があるのは関西国際空港だけ。神戸空港の国際化や、関西国際空港とのアクセス向上によって利便性を一層高めることで国際旅客を関西エリアに呼び込める。 伊丹空港は国内ビジネスジェットなどの利用に限り、機能の縮小や運用時間の短縮を図る。伊丹空港に近いリニア中央新幹線の始発着駅になる新大阪駅周辺では再開発計画も進行中で、市街地の安全確保を考慮する必要があるとした。 関西では25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機に、多くのインバウンドの来訪が見込まれる。荒井清チームリーダー(東亜建設工業)は「三つの空港があることを過剰と捉えず、関西を飛躍させる『関西ルネサンス』の生命線にすべき」とし、3空港の役割分担の重要性を説く。