デジタルで建設をDXする・69/樋口一希/メタバースに特化した空間デザインを研究

2022年7月28日 ニュース

文字サイズ

 サイバーエージェントは、メタバース空間における建築物や空間デザインの研究・企画・制作を目的とした専門組織「Metaverse Architecture Lab」(メタバースアーキテクチャラボ)を設立、建築家の隈研吾氏が顧問に就任したと公表した。
 □メタバースに特化したブランディング活動での新しい価値を生み出すバーチャル建築物を構築□
 「Metaverse Architecture Lab」は、隈氏と協働してメタバース空間に特化した空間デザインやユーザー体験・ブランディング価値を高めるバーチャル建築物の在り方に関する研究に取り組み、アパレルなどのブランド企業や小売企業の販促およびブランディング活動における新しい価値を生み出すバーチャル建築物を構築する。合わせて、商業空間にとどまらず複合施設や仮想都市などの開発、メタバース空間だからこそ実現できる建築のコンセプト設計、コンテンツ企画やユーザー体験の設計などバーチャル建築物のアーキテクチャ概念の検証から実証実験およびプロトタイプの作成にまで取り組んでいく。
 □建築基準法など現実世界の制約から開放されたオリジナルなメタバース空間を構築・定義□
 簡易テンプレートを用いて構築するバーチャル店舗や実在する街並み、実店舗などを再現したデジタルツインの空間・建築物だけではなく、建築基準法など現実世界の物理的な制約から開放されたオリジナルなメタバース空間を構築することによって可能となるユーザー体験、ブランド体験の価値を高める空間デザイン、バーチャル建築物の在り方を定義していく。
 サイバーエージェントは、メタバース空間のバーチャル建築物ならではの価値創造に取り組む空間デザイナーやCGアーティストなどの採用を強化し、さらなる体制強化を図る。今後は建築家をはじめとして空間デザイナーやコンセプトアーティストなど多様な分野で活躍するクリエイターと共に、従来の概念にとらわれないメタバース空間での空間デザインや建築物の研究・企画、新しい価値創造に取り組み、企業の新たなマーケティング活動の拡大に貢献していく。
 「リアルな建築は、周辺の環境に負荷を与えたり、多くの資源を消費したりと、ある意味でわるさをしてきたと言える。バーチャル空間であれば、それらを乗り越えた『わるさをしない』新しい建築ができるかもしれない。制限のない空間だからこそ実現できる建築の可能性を探りたい」(隈氏)。
 □活況を呈する実在都市と連動した小売りやメーカーのバーチャル建築物関連のさまざまな取り組み□
 メタバース空間は、建築との親和性も高く、実在する都市と連動した「都市連動型メタバース空間」の構築を端緒として、仮想都市の土地開発や売買、小売りやメーカーの「バーチャル店舗」建設などバーチャル建築物に関わるさまざまな取り組みも活況を呈している。
 NTTドコモは3月に、Webブラウザから無料で参加できるメタバース「XR World」を開設、アバターを操作してインターネット上の仮想空間に参加し、他のアバターと会話したり、音楽ライブ映像などのコンテンツを楽しんだりするサービスを提供している。
 みずほ銀行は、将来的なメタバースビジネスを見据え、HIKKY(東京都渋谷区)が主催・運営する世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」に出展すると19日付で発表した。グループ内外と広くつながることで新たなビジネスの創出や生産性向上などを実現する「MIZUHO次世代金融推進プロジェクト」の取り組みの一環だ。
 サイバーエージェントでも、すでにバーチャル店舗開発に特化した事業会社として「CyberMetaverse Productions」を2月に設立、メタバース空間における企業の販促活動を支援している。顧客企業からはバーチャル店舗の役割としてブランドのオリジナルな世界観を表現する場であるのと合わせて、ユーザーのブランド体験価値や顧客エンゲージメントを高める場として期待が高まっている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)