久米設計は、今期創設90周年を迎えました。 私たち組織設計事務所は社会や顧客の求めや期待に応えるため、さまざまな課題を解決し新しい価値を提案する、そのことに存在意義があると考えています。そのために常に自らが新しい課題を設定しチャレンジすることで、そこから得た知見を広く社会に還元していくことが必要だと思います。私たちはその実証的な取り組みを創設90周年記念事業として二つ行っています。創設者久米権九郎が設計した住宅「旧本多邸」保存改修プロジェクトと、旧社宅を建て替えて新たな賃貸とする三軒茶屋アパートメント計画です。 コロナ禍を経験し私たちの暮らしや働き方への考え方は大きく変化しました。それはさまざまな多様性を許容し、寛容な社会にようやくなってきたことだと思います。 私たちもそうありたいと思いこの二つのプロジェクトに取り組んでいます。これらは私たちが設計者であるとともに、その土地、建物のオーナーとなり、ユーザーや地域とより深く関わることで、これからの暮らし方や働き方、地域との関わり方を追求する取り組みとして進めています。地域におけるライフスタイルをともに考え、それにより自らの働き方や職能の幅も広げ、地域の方々やユーザーの満足度を高めていくというものです。 久米設計は日本だけではなく中国、ベトナムで規模、用途がさまざまな数多くのプロジェクトを行っています。それらは「歴史を大切にし」、「地域やまちを思い」、「建築文化に貢献し」、「新たな風景をつくる」、90年間継続してきた取り組みです。その場所が培ってきた風土や地域性など「古き」を思いながら、「新たな」価値を提案する、その中に多様性に対する許容力と寛容性を持ち合わせた「豊かさ」を真剣に考える、久米設計の新しい姿を浮かび上がらせていきたいと思っています。