デジタルで建設をDXする・80/樋口一希/熊谷組が統合型職場管理システム導入

2022年10月20日 ニュース

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 熊谷組は、次世代都市型コンパクトオフィスビルを実現するべく2021年8月竣工の福井本店ビルに木造建築+ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を採用するとともに、BIMと連動する先進的なIWMS「MainManager」(グローバルBIM社)を実装して運用を続けている。

 □福井新本店の挑戦をDXで支え、戦略的資産管理を支援するIWMS「MainManager」採用□
 福井本店ビルの建て替えに際しては、SDGs(持続可能な開発目標)に対応した脱炭素社会の実現を目指す木造建築+省エネルギー技術と、働く人々の健康増進と知的生産性の向上など職場環境に配慮した建築技術の融合を目指した。福井新本店の挑戦をDXによって支えるべく採用されたのが戦略的資産管理を支援するIWMS「MainManager」である。
 IWMS(Integrated Workplace Management System)は、統合型職場管理システムと訳され、保有する不動産、設備、インフラなどの資産を最大限に活用するべく職場リソースの管理と最適化に特化した複合的なファシリティマネジメント・システムである。

 □BIM普及率100%達成の中でMainManager導入決定、21年10月に運用作業開始□
 MainManager実装に至るBIM援用の前史を概説する。13年度にBIM推進グループを発足、BIMソフトの検証を実施し、16年度に建築事業本部建築技術統括部に生産技術部生産BIM推進グループを設置して一部作業所での施工BIMの試行を開始した。18年度には建築事業本部建築技術統括部に生産BIM推進室、設計本部に設計BIM推進グループを設置、BIMソフト「Archicad」を主軸とした全社展開を行っている。
 19年1月、グローバルBIM社に対して全社BIM展開のコンサルの依頼が行われ、3カ年計画を目途にBIM普及ロードマップ策定、教育計画立案、インフラ計画立案を進めた。計画1年目の19年度には全社BIM普及率50%、20年度には全社BIM普及率80%を達成し、各支店でのBIM集合教育も22回の実施を数えた。
 21年度には全社BIM普及率100%を達成する中で同年9月末にMainManagerの導入を決定、適用対象は福井新本店ビルとした。同年10月にはMainManagerの実運用に向けて作業を開始している。

 □3次元モデルのインポートと独自構築機能も有するMainManager□
 MainManagerは、優れたユーザー・インターフェースによって建物のオーナー、管理運営者自らが運用できる設計がなされている。ユーザーは自らのニーズに合わせて全25で構成されるモジュールから必要なモジュールを選択し、ダッシュボード(モジュール)に配置していく。これによって、ビル管理パッケージ(保全計画、突発メンテナンス、予知保全)、オフィスパッケージ(不動産、スペース、テナント、財務管理)、ヘルス・サステナビリティパッケージ(環境、安全衛生、防火、エネルギーポータル)などからなるユーザー専用のパッケージが成立する。
 BIMソフトの3次元モデル+2次元図面をインポートするとともに、MainManager内でも3次元モデルを独自構築する機能を有しており、WEBベースで稼働するのでデバイスに依存しない。
 MainManagerの福井新本店ビルへの適用に際しては、データベース構築のためのワークショップを21年末まで実施、今年4月段階でデータベースの構築は完了している。現在、データベースへの詳細な運用データの付加や管理項目の追加などを経て福井新本店ビルの稼働に合わせてMainManagerの実運用を段階的に進めており、BEMS(ビル・エネルギー管理システム)とMainManagerとの連携、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携によるMainManagerの外部機能拡幅なども計画している。
 グローバルBIM社は28日に東京・有明のTFTホールで開催される「Archi Future 2022」にMainManagerを出展する。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)