デジタルで建設をDXする・85/樋口一希/bSI認定資格取得の軌跡

2022年12月8日 ニュース

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buildingSMART Internatinal(bSI)が認定するBIMプロフェッショナル・トレーニング・コースを受講し、優秀な成績で「BIM Project Information Practitioner」の資格を取得したのが高荒洋介氏だ。この資格は、BIMの専門知識を実践に移して活動し、広く業界の発展に貢献する能力を有する者としての認証である。大手ゼネコンでも組織的に資格取得の動きがある中で、地方都市から個人として資格取得に挑戦した高荒氏に、コース受講のきっかけから認証資格取得後のBIMを用いた活動への展望までをオンライン取材した。

□BIMプロフェッショナル・トレーニング・コース受講でBIMに関する経験と知識を可視化□

設備設計事務所、建設会社を業とするプランアシスト(福島県伊達市)の取締役を務める高荒氏は、BIMという概念、用語が流通する以前の2010年ころから3次元表現を可能にする建築設備専用CAD「Rebro」を導入し運用していた。2次元CADによる単線表現が主流な中で、Rebroの運用を通して設備分野での3次元データ運用の優位性と必要性に気付いた高荒氏は、BIM Project Information Practitionerの資格取得コースを受講することで、BIMに関する経験と知識を一層、可視化できると考えた。
認定プロバイダーとしてグローバルBIM社を選択したのは、同社がわが国初のBIMサービス・プロバイダーとして豊富な実務経験を有し、BIM関連システムの開発を行っているからであった。

□国際規格のISO19650を通じて理解を深めたライフサイクルコンサルタントとしての役割□

事前講習では、単なるツールとしてのBIMにとどまらず、建設業のDX化を根底から支えるISO19650を中心に研さんを進めた。ISO19650はBIMの国際規格で、建築物のライフサイクル全体をBIMで管理、運用するプロセスについて詳細に定義している。
具体的には、発注者(施主)が作成したEIR(発注者情報要件)とAIR(資産運用時の情報要件)に従い、設計・施工業者はPIM(プロジェクト情報モデル∥設計・施工段階でのBIMモデル)を作成し、維持管理業者はAIM(資産情報モデル)を作成するとしている。合わせてPIMを維持管理に使用するAIMへと展開する際に重要な役割を果たす新しい職能として、ライフサイクルコンサルタントが明示されている。ここで最も重要なのは、まず初めに発注者がBIMを前提として発注者情報要件を明らかにし、資産運用時の情報要件までを明示する、としていることだ。

□建築物のライフサイクルをデジタル化によって運用・管理することでBIMのメリット享受□

トレーニング・コース受講のメリットは、BIMによる業務のデジタル化を再認識することにとどまらず、世界標準としてのBIMの現在地を確認できることにある。建設業は裾野の広い産業で、数多くの職種、職能によって成り立っている。自らの業務のみをBIMによってデジタル化するだけでなく、建築物のライフサイクル全体を長期にわたってデジタル化によって運用、管理できなければBIM本来のメリットを享受できない。その意味でもライフサイクルコンサルタントという職能の存在を知り得たのは大きな成果だった。
資格取得への研さんを通じて、BIMは単に3次元モデルを構築し属性情報を付加するだけでなく、建設業を改善するための戦略であり、建築物のロードマップ全体を管理するための思想だと理解できた。
BIM Project Information Practitionerの資格を取得した後には、これまで以上にBIMを援用して徹底的に業務改善するとの意欲が生まれた。周囲を見渡してもBIMの普及は緒についたばかりだ。高荒氏は資格取得者としての責任を担いつつ、BIMの普及に貢献するとともに、実務面では認証をアピールして、より高度なBIM案件に関わっていきたいと考えている。(毎週木曜日掲載)