建設業界を横断的に糾合し、BIMに代表されるDX戦略の推進を目的に結成された「建設RXコンソーシアム」の現在地と目指すべき近未来像を探る。
□スーパーゼネコン4社+過半を超える中堅ゼネコン+サブコン+関連異業種から会員参集□
建設RXコンソーシアムは、日本建設業連合会(日建連)に加盟し、研究開発機関を有する一定規模以上のゼネコンを正会員として2021年9月に16社で活動を開始した。1年余りを経て正会員28社、協力会員126社にまで成長している。
正会員の中核であるスーパーゼネコンは、鹿島、清水建設、竹中工務店に加えて大林組が参加し、今後は大成建設の合流も待たれる。協力会員は、正会員に該当しないゼネコンやサブコン、関連異業種の企業・組織としている。業界横断的にデジタルで広く架橋するべくIT系のベンチャー企業やシステムハウスも参加している。
□施工ロボットの共同開発・購入など協調領域の確立でコストダウンや協働運用も実現□
ゼネコン各社は施工ロボットやIoTを活用した施工支援ツールの開発を進めているが、各社ごとの開発は非効率で過大なコストも発生している。施工ロボットを例にとっても、共同で開発、購入できればコストダウンが図れるし、各現場で実際に使用する協力会社の作業員にとって個別に操作法を覚える手間が削減でき、習熟度が高まることで生産性向上にもつながる。
毎月開催する運営委員会では、分科会の活動報告に加えて協力会員が新製品をプレゼンテーションする機会も設けている。BIMソフトのベンダーは、バージョンアップ情報を直接、ゼネコン各社に提供できるし、ゼネコン側も協力会員から最新のDX関連情報をいち早く入手できるなど、多岐にわたる最新技術情報を建設業界内に普及・啓発する場となる。
□元請のゼネコンのみならずサブコンや協力会社との協業を目指して活動する10の分科会□
学研的な調査研究に偏することなく、現業での実利を目的に10の分科会を設けている。生産BIM分科会では、建設プロジェクトの関係者間におけるBIMデータの連携手法やBIMワークフローの共有とともに、ロボット・IoT制御でのBIM活用などの協業を追求している。
設計施工から施設管理に至るまでBIM運用が進む中で、ゼネコンごとに使用するBIMソフトも複数にまたがり、工程ごとに用いるBIMも設備BIM、鉄骨BIMなどと細分化されているため、BIM運用のルールとデータ連携において課題が生じている。これらの課題解決には元請のゼネコンのみならず、サブコンや協力会社との協業が不可欠であることから生産BIM分科会では、データ連携の共通化を主要なテーマとしてBIM運用の最適化と効率化を目指して活動を続けている。
□建設OSともいえる共通プラットフォーム+CDEを構築して広く社会課題の解決に貢献□
建設DXを巡る動きは急を告げている。国土交通省は、昨年11月15日の建築BIM環境整備部会で「BIMによる建築確認申請の試行」を25年度までに開始するとし、事業予算80億円からなる「建築BIM加速化事業」の実施要項を公表した。
軌を一にして昨年12月5日から7日まで東京ビッグサイトで開催された「建設DX展」に建設RXコンソーシアムは大規模出展した。会員企業が自社の技術・サービスを展示したブースとともに、セミナー会場も活況を呈しており、来場者の建設DXへの関心の高さと熱気を感じた。
自社のDX戦略の優劣を競う状況は終わった。建設業のDX化が平準化した暁には、建築物本来の質とサービスで競うことになる。組織だけでなく、国境さえもやすやすと越えていくデジタルの優位性を最大限に生かして、壁を作るのではなく、橋を架ける。建設OSともいえる共通プラットフォーム+共通データ環境(CDE=Common Data Environment)の構築を通して、広く社会課題の解決に貢献する建設RXコンソーシアムへの期待が高まっている。
(毎週木曜日掲載)〈アーキネットジャパン事務局〉