デジタルで建設をDXする・91/樋口一希/自動配筋検査AIシステムの開発

2023年3月2日 ニュース

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ACES(東京都文京区、※)とJFEエンジニアリング(東京都千代田区)は、共同で進めていた自動配筋検査AIシステムのアプリケーション開発と検証を完了し、現場での実用化に向けて2022年11月に国土交通省の東関東自動車道・武田川橋上部工事で試行を実施した。
□配筋検査に画像認識アルゴリズムを活用、鉄筋間隔や本数の測定結果を帳票に自動出力□
ACESは、多くの人員を要する配筋検査における鉄筋径、鉄筋本数、鉄筋間隔、継ぎ手長の計測を画像認識技術によって自動化するアルゴリズムを開発してきた。今般、それらのアルゴリズムを応用し、現場での実用化を目指して自動配筋検査AIシステムの開発をJFEエンジニアリングと共同で行い、東関道・武田川橋で試行を実施した。
具体的には、ドローンと単眼カメラを用いて真上から画像を取得、画像認識アルゴリズムを用いて鉄筋を認識させ、その後、認識された鉄筋の間隔と本数を測定して帳票を自動で出力するシステムを設計した。
□AIをはじめとするデジタル技術とドローン技術を活用して開発した自動配筋検査システム□
従来、工事の目的物の完成した部分、工事施工が完了した部分の出来形検査においては、検査作業者に加えて立会人を必要とするとともに、煩雑な撮影作業、帳票の手入力による労力を要し、さらには各種データがアナログ管理されているためデータの有効活用や参照が困難であるなど、現場への負担が過大となっていた。
加えて従来方法では、サンプリングした一部区間でのみの検査を実施しており、その他の区間ではより効率的、面的な検査が要求されるなど、検査の品質と効率面に改善余地があったため、出来形検査の自動・省力化と高度化を目的として、橋梁上部工を対象にAIをはじめとするデジタル技術とドローン技術を活用した自動配筋検査システムの開発を行った。
□デジタル技術を活用して自動・省力化、検査範囲を橋梁全域に拡張し検査の信頼性を高度化□
自動配筋検査AIシステムの採用によって自動・省力化を推進、現場への負担を低減し、作業効率化を実現する。検査範囲を橋梁全域にまで拡張することで検査の信頼性の高度化を実現すると同時に、デジタル化によるデータの利活用を促進する。
自動・省力化では、ウエアラブルカメラやネットワークカメラなどのデジタル技術を活用し、直接現場に出向かなくとも離れた場所からオンラインで遠隔臨場を行うことで現場作業人数の削減を実現し、ドローンの自動航行とAIによる自動帳票作成によって人的な作業を効率化している。
検査範囲を橋梁全域にまで拡張することで、検査の信頼性の高度化を実現している。最も重要なのは、データのデジタル化による利活用範囲の拡張と推進によって、検査データのデジタル資産化が実現することだ。
□23年度から現場での本格適用を開始、アルゴリズムの精度向上とプロダクトの開発を推進□
東関道・武田川橋の現場での試行では、アプリケーションが正常に作動することを確認している。それらの結果を踏まえて現場での本格適用は23年度から行う計画とし、今後もさらなるアルゴリズムの精度向上とプロダクトの開発を進めていく。
(※)ACES=東京大学松尾研究室のAIスタートアップとして17年に活動を開始。人の認識・解析を行うヒューマンセンシング技術をはじめとした画像・映像解析のAIアルゴリズムを用いて、人の知見を数式化し、リアル領域での産業のDXを推進している。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)