デジタルで建設をDXする・98/樋口一希/BIMを基軸とした施工図会社の役割

2023年6月1日 ニュース

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BIMサービスプロバイダーとして活動するグローバルBIM社は、BIM関連システムの開発・提供やBIM導入支援と合わせて、施工図会社が担う建設現場での総合調整機能を高度化するべく積極的な施策を進めている。
□施工図会社に求められる設計図書を読み取り施工情報を付与して現場へつなぐ総合調整力□
建設現場では、設計者と施工者の間を架橋し、設計情報を施工情報へと翻訳する総合調整機能を施工図会社が担っており、施工図は関係者間の設計意思の確認と情報共有のためのメディアとして用いられている。
現状では多くの場合、設計組織からは2次元の設計図書が提供される。施工図会社では設計図書には描かれていない施工情報を付与した施工図を作成し、意匠・構造・設備間の取り合い調整、不整合部分の見える化によって平面詳細図・躯体図などを作成する。
このように施工図会社には、2次元の設計図書を読み取り、リアルな建設現場へと架橋する高い総合調整力が求められる。最近では総合調整機能を高度化するためにBIM関連システムの有効性が認知され、援用されるケースが見られる。

□BIMによって統合された建物情報の援用によって生産性と施工品質の向上を実現□
グローバルBIM社は、BIM関連システムの開発や提供を行うとともに、それらBIM関連システムを自ら援用し、「BIMを基軸とした施工図会社」ともいえる新しい職能を担っている。国内最大規模の半導体工場のプロジェクトにおいては、デジタルによる建物情報の見える化、共有化によって総合調整機能を高度化することに成功し、従来のアナログ2次元の施工図方式での手戻りを減少、施工図作成の工数削減を実現している。
従来、施工図会社に対しては、成果物として施工図に対価が支払われていた。半導体工場プロジェクトにおいては、デジタルによる総合調整業務という新しい職能の「サービス」に対しても対価が支払われている。
BIMによって建物情報を統合管理するデジタル化された建設現場では、作業工数の減少に見られる生産性向上に加えて施工品質の向上にも寄与する。それらは施主・事業主にとっても建設費の適正化、見える化を可能とし、元請の建設会社にとっては現下の人手不足の解消にも貢献する。合わせて「BIMを基軸とした施工図会社」という新しい職能の認知へと結び付き、事業領域の拡張を可能にする。

□「BIMを基軸とした施工図会社」の総合調整機能によりデジタル空間に仮想竣工を実現□
シンガポール政府の建築建設局(BCA=Building and Construction Authority)の傘下でBIM教育を行うBCA AcademyにはBIM Studioと呼ばれる施設がある。入り口のプレートに掲げられていたのが「Build twice,first virtual,then real.」だ。「二度建てる。最初は仮想的に、そして実際に」。「BIMを基軸とした施工図会社」として機能するグローバルBIM社は、バーチャル空間上に仮想竣工を実現している。
仮想竣工によってデジタル空間上に、最初に対象建物を建ててしまうことで設計段階では早期に、納まり上の問題点の発見や不整合を削減できるし、施工段階でもあらかじめ納まり検証などができているためより適切な施工計画を遂行できる。視覚的でわかりやすい3次元モデルによって施主・事業主との合意形成の精度も上がる。元請の建設会社にとっては、焦眉の急である時間外労働の削減と人手不足の解消へと結びつき、余裕のある労務状況を実現する。
建設業にとって最も重要な生産拠点である建設現場において、BIM関連システムを徹底活用して情報をデジタル化する際に中心的な役割を果たすのが「BIMを基軸とした施工図会社」だ。グローバルBIM社は、施工図会社として長年にわたる優れた実績を有するアートヴィレッヂとM&A(企業合併・買収)での事業譲渡によって合体し、建設業のデジタル化を推進している。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)