関東大震災100年-教訓を生かす・3/訓練と検証のサイクル継続

2023年8月29日 ニュース [1面]

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 ◇関東整備局、八方向作戦実効性高める
 被災地と外部との連絡機能の維持は最重要課題の一つ。国土交通省関東地方整備局は過去の災害の教訓を生かし、DXなど最新技術を活用した災害対応の即時性と実効性を高めている。既存の計画見直しや訓練を重ね、切迫する首都直下地震に備える。関東整備局の小林達徳統括防災官は「装備を充実させて訓練しても完璧はない。訓練と検証のサイクルを回し続ける絶え間ない努力が必要だ」と指摘する。
 8月3日、東京・有明にある東京臨海広域防災公園内を、小柄な黄色い三輪バイクががれきに見立てた障害物の間をスルスルと動き回った。関東整備局は道路啓開訓練に映像を伝送する三輪トライクを初披露した。道路情報板を光ファイバーの接続ポイントとする情報コンセントの模擬訓練。大型スクリーンに車載カメラの映像が流れると関係者から驚きの声が上がった。
 こうした訓練は7月に改定した「首都直下地震道路啓開計画(通称・八方向作戦)」に基づく新たな取り組み。改定後、初めての実践訓練は過去最大規模で行われた。
 八方向作戦は、人命救助の目安となる72時間を考慮し「発災後48時間以内に少なくとも都心に向けた1ルート(上下2車線)を確保する」ことを目標としている。今回の改定では計画の実効性を高めるため▽他主体との連携強化▽新技術を活用した情報収集・初動の迅速化▽河川・港湾など道路以外との連携の模索-の三つを新たに盛り込んだ。
 連携強化は行政機関だけでなく民間企業も巻き込み、初動対応の強化を狙う。関東整備局は6月、全国の整備局で初めて携帯電話会社4社と連携協定を結んだ。道路啓開作業時の連絡手段に臨時の携帯電話網を生かす。
 改定後の八方向作戦には河川(緊急用船着き場)や港湾(耐震岸壁)の活用が加わった。緊急輸送道路との接続をはじめ検証が必要な事項もあるが、非常時の緊急ルートとして期待が高まる。
 東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県には総人口の約3分の1が集中する。65歳以上の人口割合は、関東大震災当時(1920年)5・3%だったが、現在(2020年)は28・6%に上昇。日本に住む外国人は1920年が7・8万人に対し、2020年は約275万人に上る。こうした環境の変化に伴い生じる課題への対応も求められる。
 小林防災統括官は「個人だけでなく組織全体が“わがこと化”しなければ組織間の連携は機能しない」と説く。「震災の8割は想定できる」とした上で、「いかに残る2割に全力投球できるか。DXを含めた取り組みは絶え間なく続けていかなくてはならない」と気を引き締め、次の一手を追求する。