関東大震災100年-教訓を生かす・5/今も残る木密地域、改善急ぐ

2023年8月31日 ニュース [1面]

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 ◇東京都、建て替え・耐震化支援
 関東大震災では首都東京の死者・行方不明者数が約7万人に上った。揺れそのものよりも、直後に発生した火災が被害を大きくした。100年後のいま、首都直下地震の発生が高確率で予測される中、東京都は延焼被害を抑えるため、今も残る木造住宅密集(木密)地域の改善を急ぐ。
 「『倒れない・燃えない・助かる』。この三つのキーワードを含むまちをつくる」。小池百合子知事は建物の耐震化や木密地域の改善をさらに進め、住民が安心して生活できるまちの実現を目指す。   
 木密地域は現在、山手線の外周部に多い。都は木密地域に幹線道路や河川、鉄道などによる延焼遮断帯を1~4キロメッシュ(四方)で設定。延焼遮断帯は外側から「木密地域」「整備地域」「重点整備地域」の3層構造とし、各地域ごと事業を展開している。
 最優先で対応すべき重点整備地域は52地区あり、すべて「不燃化特区」に指定している。区を通じて、建て替え相談を受ける専門家の派遣のほか、老朽化した建物の除却費と新たな建物の設計費を一部助成。2023年度には建築工事費の支援を始め、建物の延べ床面積に応じた定額を補助している。いずれも25年度までの措置となる。
 都は市街地の燃えにくさを示す指標として「不燃化領域率」を採用。重点整備地域全体の不燃化領域率で25年度に70%(16年度56%)を目指している。
 足立区の千住仲町地区は重点整備地域の一つ。区は防災街区整備地区計画を07年度に策定し、同地区内で建物の建て替え時に守るべきルールを定めた。08年度には道路整備や建て替えなどを促進する密集市街地整備事業を導入。同地区内の六つの道路の中で50カ所以上を拡幅し、四つの小広場を開設した。不燃化領域率は46%(08年)から60・5%(22年)に改善した。
 密集市街地整備事業は22年度に終えた。区は今後も「不燃化特区や耐震助成により、建て替えや耐震化を促進する」考えだ。
 都は22年5月、首都直下地震による被害想定を10年ぶりに見直した。最も被害が大きな都心南部直下地震で建物の全倒壊数や建物倒壊による死者数が前回想定(12年)よりも3~4割軽減できると見込んだ。この10年、防災・減災対策を強力に推進してきた成果が現れた格好だが、自然災害も年々激甚化している。長期的に防災力を高める「TOKYO強靱化プロジェクト」を4月に始動。40年代を目標に地震や風水害対策に挑む。総事業費約15兆円のうち、今後10年間で6兆円を投じる。
 国や都、インフラ事業者やデベロッパーは、過去の災害で学んだ教訓を生かし公助の役割を担ってきた。災害対応に終わりはない。想定外の被害を減らすため、関係機関の緊密な連携が一層求められる。=おわり
 (関東大震災100年取材班=編集部・溝口和幸、遠藤剛司、木全真平、阪本繁紀、若松宏史)