土木学会小委/公共工事の価格決定構造転換を、労務費など積み上げ方式で

2024年6月28日 行政・団体 [1面]

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 土木学会の研究小委員会(木下誠也委員長)は27日、公共調達の在り方に関する報告書を明らかにした。予定価格(上限価格)と最低制限価格・調査基準価格(下限価格)を巡る問題や競争の実態を踏まえ、実際の下請価格や労務費などの積み上げによって公共工事の価格を決める構造に転換するよう求めた。不調不落が出ない予定価格や、適切な価格を失格にしないダンピング対策の検討なども提案した。
 建設マネジメント委員会の「公共工事の価格決定構造の転換に関する研究小委員会」が、2020年3月から行った予定価格と価格構造についての討議の成果を報告書にした。
 価格決定構造の転換は、安全・品質の確保、適切な対価の支払い、施工の創意工夫、技術開発を促す調達などを実現するのが狙い。下請価格と労務賃金などが適切に支払われることをルールとした上で、積み上げ方式で入札金額を決める方策などを求めた。
 価格の上限・下限と入札を適切に見直すことで、不調不落が出ない予定価格や新しい調査基準価格などを設定するよう提案。標準歩掛かりが適さない工種について意見する仕組みや、予算内で参考見積もりを最高額として予定価格に定める方法、作業時間や賃金支払いの証明書に基づいて発注者が加点評価する試行工事などの導入も求めた。「真に競争力が高い」会社が調査基準価格を下回っても施工体制の評価で満点が取れる運用も必要とした。
 報告書では価格決定構造の転換により、最も有利な施工体制・施工計画の立案や、見積もりに基づく下請価格の決定が促され、マネジメント力や物的・付加価値労働生産性を競う市場の形成につながると効果を説明している。価格の妥当性の説明などが求められるものの「上限・下限を適切に運用し、申し込みしたい価格で申し込みできる取り組み」も提案した。
 報告書は現在の公共調達について、落札金額から下請価格が決まり、賃金の原資の確保が難しくなりやすく、上限・下限の価格の存在から施工のインセンティブが働きにくい問題を指摘した。不調不落の社会的損失と行政コストの増大も懸念した。
 小委員会は会計法の規定や予定価格制度が維持されるのを前提に対応を議論した。契約解除の事例や、「調査基準価格の直上を狙う入札」という市場の実態も考慮した。