「女性でもかっこよくない？」。そんな素直な気持ちで父と同じ仕事を選び、建設現場に飛び込んだ。幼い頃から父を慕って自宅を訪ねてくる仕事仲間にかわいがってもらった。女性が誰もいない現場でも違和感はなくむしろ気が楽だった。「性格も豪快な方かな」と笑う。
　実際の仕事では男女の体力差を痛感。女性用のトイレや更衣室がないことには抵抗があり、我慢したり工夫したり人知れず苦労した。それでも「自分にできることは自分でやる。他人任せにはしない」との決意で壁を乗り越えてきた。
　無事故・無災害で大きな仕事を完成させてきたことが誇りだ。自慢は東京スカイツリーや麻布台ヒルズ。空調設備が付く前の蒸し風呂のような現場で「みんなが涼しく夏を過ごせられるように頑張っている」。
　女性が数人しかいない登録保温保冷基幹技能者の資格を取得し、昨年度は国土交通省の「建設ジュニアマスター」に選ばれた。大阪断熱東京支店の協力会の会長になって２年目。周りは年上ばかりだが気は使わず「正しいことは正しい。間違いは間違い」ときっぱり。大好きなバーベキューを企画するなど率先して盛り上げ役を担う。
　最近は現場に女性も増え、若手から相談を受けることも多い。しかし働く場として社会からまだ遅れていないか。仕事に魅力を感じ、励みとなる環境でなければ若い人も長続きしない。「男女関係なく働きやすい職場へ」。今後の業界全体の変化に期待する。
　清川保温工業（大阪断熱東京支店所属）（わかもり・ゆか）