能登半島地震から半年/建設業の役割さらに拡大、工事円滑化へ調整要請

2024年7月1日 行政・団体 [1面]

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 能登半島地震から1日で半年を迎える。道路啓開やインフラ復旧が進み、復興への歩みは着実に進展。発災直後から応急対応を先導してきた国土交通省の遠藤仁彦前北陸地方整備局長は「オール建設業界の災害対応」と振り返り、「多くの困難を克服しながらの献身的な対応に感謝している」と謝意を示す。政府が6月28日に開いた復旧・復興支援本部の会合で、岸田文雄首相は復興まちづくりの本格化に向け「機動的な予算措置に加え、オール霞が関がワンチームとなり復興を加速することが必要だ」と強調した。=2、11面に関連記事
 1月7日時点で約6割にとどまった主要幹線道路の緊急復旧は進捗が約9割に達した。隆起した海岸を整備し緊急車両を通した区間もある。能越自動車道・のと里山海道は17日にほぼ全区間で対面通行が再開される。政府が6月26日に開いた能登半島地震を踏まえた災害対策を検討する有識者作業部会では、道路復旧の資料で「地元を中心とした各建設業協会や日本建設業連合会の応援」の取り組みが紹介された。
 被災3県455カ所での土砂災害は、二次災害の危険がある26カ所で一部の応急対策が完了した。津波や地盤隆起が発生した港湾・海岸は権限代行による国の復旧が進行。2月から実施していた輪島港の漁船だまりでの浚渫作業が6月25日に終わり、地元から追加要請された船揚場周辺の浚渫も7月下旬をめどに完了させる。
 60カ所が被災した石川県内の漁港は、直轄代行の浚渫を一部で実施。水産庁は技術的な復旧方法の選択肢を7月中に示す。水道行政の移管もあって国交省は上下水道一体の復旧支援を行った。優先度や工程を調整し、水道本管は早期復旧が困難な地域を除いて5月末で復旧を終えた。
 石川県が見込む必要な応急仮設住宅は6810戸。6642戸が着工済みで原則8月の完成を目指す。富山や新潟でも被害が出た宅地の液状化は、対策工法の検討や再発防止への支援が進む。政府は岸田首相の指示で、発災からの対応を総括し、リポートにまとめた。有効な新技術・方策をカタログに記載し、自治体に周知していく。
 復興への課題は少なくない。一つが被災建物の解体。県や市町の工程管理会議が設置されたが、石川県によると公費解体の申請は6月24日時点で2万0865棟、着手は2601棟にとどまる。輪島市の朝市通り周辺の地区は、法務局の職権滅失登記の完了に伴い、面的な解体・撤去が進む見通し。対象エリア264棟の家屋などに対し、公費解体の申請は172棟ある。環境省によると約500班の解体工事の体制が編成された。
 工事の円滑化も課題に挙がる。道路啓開に当たる石川県建設業協会会員企業の施工担当者は「調達は落ち着いたが、工事業者が多い。人の問題がある」と話す。有識者作業部会で馳浩知事は、受注・発注の調整や支払いを課題に挙げ、「工事を円滑に行う仕切り役、システムが必要」と訴えた。作業部会主査の福和伸夫名古屋大学名誉教授も「事業者の調整は重要」と指摘した。
 福和氏は全国平均を上回る人口減少と高齢化が起きていた被災地を「将来の日本の縮図」と捉え、今後発生する災害への備えの検討に意欲を見せた。石川県は、創造的復興プランのリーディング事業にインフラの強靱化を入れた。「能登地域の復興に最大限配慮しながら本復旧に当たっていただきたい」(遠藤氏)。建設産業が担う役割はさらに広がり、期待も高まる一方だ。