労研首脳が会見/柔軟性のある能力備えよ、労災防止へ安全教育の在り方など示す

2024年7月2日 行政・団体 [2面]

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 建設労務安全研究会(労研)の細谷浩昭理事長、佐藤恭二、稲直人両副理事長は6月28日に東京都内で会見し、本年度の活動方針を説明した。細谷理事長は現場の労働災害防止に向けた教育の在り方について「非常時にはマニュアル外の行動が求められる。レジリエンス力(柔軟性)のある能力を備える教育が重要だ」との考えを示した。
 細谷理事長は冒頭、「安全のための活動はマンネリ化してしまう。マンネリ化を防ぎ、現場の安全を確保するには不断の努力をしなくてはいけない」と本年度の活動に向けて決意を新たにした。
 建設業への時間外労働上限規制の適用などを背景に、各社が現場の負担軽減を目的に安全書類のチェックなどを外部委託する動きがあると業界の現状を説明。「現場の生産性向上は重要だ」とした上で、「安全書類が何の目的で必要とされているのか、安全管理の本質や目的を理解した上でアウトソーシングする必要がある」と指摘した。
 現場の災害防止に向けたマニュアルについて「定常時は効果があるが、非常時にはマニュアルにない、臨機応変な対応が求められる。安全の本質を理解しながら、非常時の対処を学んでもらうことが今後の安全教育で問われる」との考えを示した。
 本年度の事業方針では、厚生労働省など行政や関係団体との意見交換会を実施し、情報の共有を通じて安全管理水準のレベルアップを目指す。特別委員会では建設現場での化学物質管理の在り方に関する調査・研究に取り組む。
 佐藤副理事長は「建設現場のIT活用が加速している。ITツールは必要だが、目的の理解がおろそかになっているように感じる」と述べ、より本質的な安全教育の推進が大切と指摘した。稲副理事長は今後の気温上昇に向けて「昨年は熱中症による休業件数が増加し、今年も同様の傾向になると見ている。昨年の反省を生かし、現場の熱中症予防に取り組みたい」と力を込めた。