東京都/積極的にBIM・CIM活用、より高い品質を確保へ

2024年7月2日 行政・団体 [4面]

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 東京都がBIM/CIMの利活用をさらに進める。新築の建築設計で関係者間の円滑な合意形成や効率的な整合性確認などの効果を検証。壁や柱など部材の仕様も定め、活用しやすい環境を整える。土木では測量から設計、施工、維持管理までの建設生産・管理プロセスを通じて3Dデータの利活用を模索。生産効率の向上だけでなく、より高い品質の確保を目指す。住宅の建て替えでは設計と施工に関する基本的な考え方などを示すガイドラインを作成する。
 都財務局は2020年度から建築物の設計を対象にBIMを試行導入している。主に新築案件で活用しており、23年度が5件、24年度は6件に適用する計画だ。庁内の起工部署や設計会社などが建物の完成イメージを3Dで共有。図面の修正や整合性の確認などをどれだけ効率化できるか分析を続ける。
 25年度は7件で検証予定のほか、BIMの適用に必要な壁や柱、窓など部材の仕様も決めて、「発注者として活用できる体制を整える」(財務局担当者)考えだ。
 都建設局は土木を対象に業務と工事で試行している。BIM/CIMのデータを建設生産・管理プロセスで利活用し、効率化や高度化を図るのが狙いだ。試行件数は非公表だが、「年度を追うごとに少しずつ増えている」(建設局担当者)状況だ。
 見えてきた課題は大きく二つ。一つは精度の高いデータ取得とコストのバランス。施工や維持管理など後工程で活用するには、測量や設計など初期の工程でいかに精緻なデータを取得し、使うかが重要になる。ただ精度の高いデータを取得しようとするほどコストがかさむ。建設局では最良の方法を模索している。
 二つ目はデータの取り扱い。受注者が使用するBIM/CIMソフトに互換性がなく、データも連携できないケースがあるという。さらに構造物が完成後、数十年にわたる維持管理で有効なデータをどう見極めるかも求められる。国の動向を注視しながら、手探りで必要なデータを少しずつ見つけ出そうとしている。
 都住宅政策本部は都営住宅の建て替え事業で、新たに建てる住棟の設計や工事でのBIM活用を検討している。23年度には都営住宅の建て替え事業を受注した実績を持つ民間事業者を対象に、設計や工事でどの程度BIMを使ったか実態調査を行った。
 24年度は設計会社や建設会社など向けに、基本的な考え方などを示したガイドラインを作成する。25年度以降、BIMを本格導入する計画だ。