回転窓/眺める派の富士

2024年7月3日 論説・コラム [1面]

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 日本を代表する国内最高峰の富士山。生まれ育った静岡、現在暮らす神奈川の地で日々眺めてきたその姿は、いつも変わらず威風堂々としている▼遠方からも一目で分かる特徴的な形は芸術家たちの創作意欲をかき立て、無数の作品を世に出してきた。江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景」は世界的に知られる▼独創的な構図で富士の威容を示しつつ、周辺のさまざまな場所で生き生きと暮らし、働く庶民の姿などを描いた風景版画シリーズは全46図に上る。当初刊行された36図が好評だったことから、10図が追加・制作された▼きょう3日に発行される新紙幣のうち、千円札の裏面には同シリーズでも特に有名な「神奈川沖浪裏」が描かれている。海外の競売では1枚数億円で落札されるなど人気が高い▼個人的に富士山は眺めて楽しむ派だが、国内外から登山を楽しむ人が急増。オーバーツーリズム(観光公害)が問題視される中、1日に山開きした山梨県側登山道(吉田ルート)では人数規制と通行料を導入し、5合目付近には仮設ゲートが設置された。世界に誇る文化遺産を守り続けねばならない。