京都府建築士事務所協会(京都会)の会長として実践してきた経験を生かしながら、日本建築士事務所協会連合会(日事連)の運営に当たる。財政基盤の強化に取り組みつつ、環境問題への対応などにも力を注ぎ、社会に貢献していく。建築士法の中で建築士事務所の業法に当たる内容の確立や、協会加入の義務化に対しては「創立時からの悲願」との思いが強い。議論を深めて、より良い在り方を模索していく。
--就任の抱負を。
「やらなければいけないことがたくさんある。正直者がばかを見ない業界にしたい。日事連や(都道府県)単位会の財政再建が一番であり、自立するため安定的な財源の確保が必要だ。京都会は事業を受託することで赤字になっていない。建築士事務所の登録業務は収入になるが、人件費を考えると赤字になっている可能性がある。単価の値上げを要望している。公共事業の低価格での落札も課題だ。安ければ良いという発想は今の世の中では通用しない。単位会と共に要望していく」
--喫緊の課題は。
「2025年4月から原則すべての新築住宅・建築物に省エネ基準への適用が義務化される。すべての会員が分かる情報を出すことが急務だ。技術的な面のサポートが会員メリットになる。スクラップ・アンド・ビルドから、リユースやコンバージョンに変わってきている。地球環境やカーボンニュートラル(CN)への取り組みは建築士事務所としての使命だ。責任は重いが期待もされている。木造・木質化にもワーキンググループ(WG)で取り組む」
--法制度への見解は。
「業法の確立へ建築設計3会(日事連、日本建築士会連合会、日本建築家協会)が合同で要望し、14年に改正建築士法が成立した。しかし、取りこぼしがある。今は建築士事務所が誰でも開設できる。小規模であれば誰でも設計でき、契約を交わしていないケースもある。開設者の資格と、小規模を含めた書面契約や業務独占が課題だ。まずは建築設計3会や(日本建築学会と日本建設業連合会を加えた)建築5会でコンセンサスを得て、国土交通省に働き掛けていきたい。強制加入が高いハードルであることは理解しているが、そうなれば自立して監督ができる。『錦の御旗』を下げるわけにはいかない」
--今後に向けては。
「DX化が進んでいる。BIMも普及していかなければいけない。AIが入るとさらに変わるだろう。過去の重要な伝統は継承しながら、時代の流れに対応して前に進んでいきたい。若い人材の登用も必要だ。青年部会を引き続きサポートする。女性のWGもつくり支援していく」。
(6月25日就任)
(うえの・ひろや)1984年摂南大学工学部建築学科卒、石原工務店入社。86年上野一級建築士事務所(現上野建築事務所)入社。2010年から代表取締役。京都府建築士事務所協会で07~14年と17年から現在まで会長として活躍。日事連は22年から副会長を務めていた。「若い世代を活性化したい」と笑顔で話す。京都府出身、65歳。