回転窓/「お客さまは神様」の真意

2024年7月12日 論説・コラム [1面]

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 民鉄やJR各社ら鉄道事業者が暴力行為防止のPRポスターを12日から一斉に張り出す。「その拳、一発でもダメ!」と強く表現した▼鉄道事業者37社局の統計によると、2023年度の鉄道係員に対する暴力行為は517件。曜日では金土日、時間帯では夜・深夜が多い。年齢別では60代以上が唯一2割を超えているが、年代に限らず幅広い層が加害者になっている▼「お客様は神様です」というフレーズは歌手の三波春夫が広めたとされる。三波は『歌藝の天地』(PHP研究所)で「舞台に立つとき、敬虔(けいけん)な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の芸はできない」と記している▼芸一筋に生きた中で「お客様を神様とみる」という心構えを持ち続けたのが真意。聴衆にこびる発想ではないと、三波のオフィシャルサイトは記している▼顧客とサービス提供者の双方がいなければ社会は回らない。お互い様の気持ちが不可欠だ。働き方が変わりつつある建設業界と発注者との関係も同じ。より良い社会を保ち続けるためにも、カスタマーハラスメントには毅然とした態度で臨む必要がある。