前田建設、前田製作所/導水路トンネルの吹き付け・ならしを自動化する台車を開発

2024年7月16日 技術・商品 [3面]

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 前田建設と前田製作所は水力発電所の断面が小さい導水路トンネルの補修・更新工事向けに、補修材のポリマーセメントモルタル(PCM)を吹き付け、ならす作業までを自動化した施工台車を共同開発した。大型機械の導入が難しい狭い空間で施工の省人化を図りつつ、安全性を高める。茨城県取手市の前田建設ICI総合センターで実大規模の模擬トンネルを使った実証試験を行い、実用性を確かめた。
 「吹き付け・左官自動施工台車」は、主に壁面に対して上下左右に速さを制御しながら動ける自動吹き付け機構と、吹き付け後に滑らかに整える自動ならし機構で構成。台車の構造は施工中の通路と資機材の運搬経路を確保するため、トンネル中央の空間を使える門型とした。自動ならし機構はPCMの吹き付け面に微動するブレードを押し当てることで余ったセメントペーストをそぎ落とす。ブレードの位置合わせは左右に首振り可能な調整機構などにより実現した。
 実証試験では、設定したPCMの厚さ(10~25ミリ)を確保しながら1スパン(3・64平方メートル)当たり約10分で吹き付け。ならし作業も最終段階に近い状態まで均一に吹き付け面を仕上げた。従来は同様の作業に1班当たり6人を要したが、台車を使うことで4人で済むようになり、大幅な省人化につなげられる。
 国内の水力発電所が老朽化しリニューアル需要が増える中、狭小な導水路トンネル内での作業員の安全確保や環境改善が課題となっている。前田建設は今後、他の断面が小さいトンネルや狭小空間にも応用ができるとして開発を続ける。