改正建築物省エネ法・建築基準法が全面施行〈上〉/省エネ基準適合義務化

2024年7月22日 行政・団体 [2面]

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 2022年6月公布の改正建築物省エネ法・建築基準法が25年4月に全面施行する。1年刻みで進めてきた段階的な施行の最後となる25年4月施行分の詳細を定める省令・告示を今月までにすべて公布。▽省エネ基準適合義務化▽建築確認の見直し▽構造関係規定の見直し-の三つの措置が講じられる。主に小規模な住宅・建築物を手掛ける工務店や建築士の業務内容に影響を及ぼす施行内容を3回に分けて解説する。
 25年4月以降に着工する住宅・建築物には、原則として新築・増改築する場合はすべて省エネ基準への適合を義務化する。増改築の場合、建築物全体ではなく増改築部分に限り適合が求められる。床面積10平方メートル以下の新築・増改築や歴史的建造物、仮設建築物などは適用除外となるが、それ以外はすべて省エネ基準への適合性の判定(省エネ適判)を行う必要がある。
 省エネ適判の対象は現状の年1万~1万数千件から年40~45万件に急増すると予測されている。そこで国土交通省は審査手続きの合理化と審査体制の拡充を併せて講じる。
 住宅では外皮性能や1次エネルギー消費量を仕様基準で評価する方法があり、その場合は通常の建築確認の手続きの中で省エネ基準への適合を確認するため省エネ適判は不要となる。さらに住宅性能評価や長期優良住宅認定、長期使用構造等確認の手続きに併せて省エネ適判の省略などを行える仕組みも設ける。
 審査業務に当たる省エネ適判員の体制拡充は、資格要件を見直すことで対応。適判員となるための講習は1級建築士などを受講資格とした1種類だけだったが、10月に実施する24年度の講習からは現行の受講資格に相当する「講習A」に加え、2級建築士などを受講資格とした「講習B」と木造建築士を受講資格とした「講習C」を創設。それぞれ適判業務を可能とする建築物の範囲を分けて運用する。さらに住宅に限り、住宅性能評価員を講習不要で適判員とすることを認める。
 国交省らは住宅・建築物の省エネ性能をさらに底上げするため今後も規制措置を強める方針。容積率緩和などのインセンティブの対象となる誘導基準は22年10月からZEB・ZEH水準に引き上げられており、義務基準は全面適合後も段階的に引き上げ30年までにZEB・ZEH水準とする方向だ。