回転窓/知人の空き家

2024年7月24日 行政・団体 [1面]

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 海辺の高台にある築50年の空き家を購入した知人は、朝早く海に入ってから仕事に出かける。この時期は釣り人がルアーでシマアジなどを狙っているが、「そこに魚はいませんよ」と伝えたい時もあるそう▼夏場は日差しを強く感じるが、心地よい風が吹き抜けるロケーション。夜には南の空でさそり座のアンタレスが赤くきらめき、海面が夜光虫の光で青白く輝く日も。「竹がすぐ伸びる」など手入れの苦労は多そうだが、知人の笑顔がまぶしく見える▼総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、空き家は過去最多の18年から51万戸増の900万戸に。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は過去最高の13・8%に達した▼対策が急がれる中、国土交通省は今後の空き家対策のモデルとして支援先の50件を決めた。建材を再活用することで解体費を縮減したり、移住希望者と大家のマッチングを進めたりするなど、各地の取り組みを後押しする▼知人宅の元家主は高齢のため市街地のマンションに引っ越したという。手放したい人も、欲しい人もいる空き家。多様なニーズに目を向ければ、新たな価値を見いだせる。