日建設計/ダイバーシティー経営テーマに講演会、女性の力生かし競争力向上へ

2024年7月25日 行事 [12面]

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 日建設計グループは22日、ダイバーシティー経営をテーマにした講演会「NIKKEN FORUM」を、東京都千代田区の経団連会館で開いた。朝日新聞社勤務やAERA編集長を経て活躍しているジャーナリストの浜田敬子氏が登壇し、女性活躍やダイバーシティー推進の必要性を、データや実例を交えて紹介。競争力向上や優秀な人材を獲得していく観点からも取り組みが必要だと訴えた。
 タイトルは「男性中心企業の終焉(しゅうえん)-見える風景を変えるダイバーシティー経営に向けて-」。浜田氏は、AERA編集部で女性の悩みを取り上げようとした時のエピソードを原体験として披露。「男性から『女子どもの話はニュースではない』と言われたが、女性や子どもの悩みを取り上げて部数が伸びた。男性が見ていた外にマーケットがあった」と語った。
 日本がジェンダーギャップ統計において先進国で最低レベルになっていることや、競争力の観点でも低迷している状況に触れ、「女性の力を生かし切れていないことが競争力低下や経済停滞に結び付いていると思う。世界はもっと努力していて、差が広がっている」と危機感を示した。「ジェンダー格差は人権の問題。男女平等を重要視しないと海外の基準に合わなくなる」と指摘。ダイバーシティー先進国のアイスランドで「あらゆる差別は賃金に表れると言われている」と紹介し、「賃金格差を投資家も注目している」と語った。
 同質性の高い組織は、過去の成功体験を踏襲しやすく、外部環境の変化に気付きにくいなどの懸念があると強調。多様な人材がいる組織の方が多様なニーズへの対応力があり、若い世代や女性などの優秀な人材を集めていくためにも、組織の多様性を高めていくことが重要との見方を示した。
 女性が管理職を嫌がるという見方があることに対しては、「チャレンジの機会を平等に与えているのか」と疑問を呈し、「作られた能力格差がある。一律の制度ではなく、それぞれに合った支援をするのが公平だ。過渡期には数値目標も必要だ」と述べた。
 「家庭の心配をしないでいい若い時に大きなチャンスを与えてリーダーの経験をすると、もっと成長したいという気持ちが持ち続けられると思う」との認識も示した。「子育てをしながらの業務は難しいだろう」などと決めつけることが女性の機会損失につながっており、対話しながら一人一人の事情に向き合って支援する重要性も指摘した。
 パネルディスカッションも実施。日建設計総合研究所の石川貴之所長は「リーダーに求められる資質も変わってくる」と問題提起した。浜田氏は「男性も限られた価値観やマッチョな働き方になじんだ人だけが上がってきていた。リーダーの要件定義を見直していくことが必要だ」と述べた。
 日建設計の木村由布子執行役員都市・社会基盤部門都市開発グループ代表は、子育ての経験を振り返り「保育園や小学校でいろいろなことを知った。多様な体験がキャリアアップにつながる目線を持ってほしい」と話した。