改正建築物省エネ法・建築基準法が全面施行〈下〉/木造で構造計算の必要範囲拡大

2024年7月25日 行政・団体 [2面]

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 改正建築物省エネ法・建築基準法の全面施行の一環で、建築物の構造・規模ごとに定められた構造安全性を確認する方法が2025年4月に変わる。小規模な木造であっても大スパンの屋根を採用するなど用途・仕様の多様化が進んでいることを背景に、構造計算が必要となる延べ床面積の要件を引き下げ300平方メートル超とする。一方、高度な構造計算までは要求せず、2級建築士でも設計できる簡易な構造計算が可能な建物高さの範囲を拡大。構造計算の義務付けを建物の面積の観点で強化し、高さの観点では緩和した格好だ。
 近年の着工統計で木造建築物の用途別の棟数を見ると、延べ床面積300平方メートル以下のほぼ全棟が一戸建て住宅で、それ以上の規模になると一戸建て住宅は2割に満たず学校・教育や医療、小売業など幅広い用途に広がる。現行は2階建て以下で「延べ床面積300平方メートル超500平方メートル以下」の木造も必要壁量などの仕様規定で対応可能だが、新たに構造計算の対象に加えて安全確保につなげる。
 さらに木造では断熱性向上などを目的に階高を高くするニーズが高まっている。そこで許容応力度計算による簡易な構造計算が可能な範囲を、現行の「高さ13メートル以下かつ軒高9メートル以下」から「3階建て以下かつ高さ16メートル以下」に拡大する。
 S造とアルミニウム合金造の建築物を対象に、簡易な構造計算を認める新たなルートを創設。現行で高度な構造計算を要する「高さ13メートル超16メートル以下」の建築物でも条件を満たせば簡易な構造計算が可能になる。さらに高さ16メートル以下のS造建築物まで、ほかの条件も踏まえボルト接合を適用できる範囲を拡大する。
 改正法では構造計算が不要となる小規模な木造建築物に用いる仕様規定の基準も見直す。必要壁量と柱の小径を「軽い屋根」「重い屋根」の区分に応じ算定する現行基準を廃止。建築物の荷重の実態に応じ算定する方法とする。省エネ化による建築物の重量化や仕様の多様化を踏まえた措置。算定式を用いる方法になるため、個別の仕様に応じ必要壁量などを容易に把握・計算できる試算例(早見表)や設計支援ツールを用意する。施行後も経過措置として現行基準の適用を1年に限り認める。
 省エネ基準の適合義務化や建築確認の見直しを含め、25年4月に施行する改正事項は主に小規模な住宅などを手掛ける工務店や建築士の業務内容に大きな影響を与える。
 国土交通省は都道府県ごとの建築関係団体と連携し、個々の建築士の相談に応じるサポート体制を構築。遅くとも同1月までに全国で開始し、建築物の設計・審査・施行プロセスが滞りなく進められるよう万全を期す。