土木学会/流域治水で提言、水収支の見える化と多段階で浸水リスク想定の2本柱

2024年7月29日 行政・団体 [1面]

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 土木学会(佐々木葉会長)は26日、流域治水の在り方について「流域全体での水収支の見える化」と「多段階における浸水リスクの想定」の二つを柱とする提言を発表した。近年激甚化している水害を踏まえて策定。時系列で浸水シナリオを見える化し、行政や民間企業だけでなく、多くの住民に流域治水への参画を促す。流域治水を俯瞰(ふかん)的に見通せる次世代人材の育成や、観測体制の強化に向けた観測機器の開発なども盛り込んだ。
 提言「流域全体における水収支の把握と領域の垣根を越えた協働で進める流域治水 流域内の水量バランスを全住民が知り、考え、行動するために」は、土木学会豪雨災害対策総合検討委員会フォローアップワーキンググループ(委員長・塚原健一九州大学工学部土木工学科教授)がまとめた。
 同日、東京都新宿区の土木学会講堂で会見した佐々木会長は「東北地方では豪雨で甚大な被害が発生しており、これらの水害防止へ提言をまとめた。雨量や河川の流量などを把握し、浸水想定図などを使って関係者に理解してもらうことが必要だ」と説明した=写真。
 提言では降雨量、河道貯留量、河道流下量、氾濫量といった各水量が時系列でどのように変化しているのかを示した「流域水収支図」の作成が必要と指摘。加えて、どの程度の規模や発生頻度の降雨で、どの領域が、どの程度浸水するのかを予測する「多段階リスク明示型浸水想定図」も作成し、二つをリンクさせることで、時系列での浸水シナリオの見える化が可能とした。
 流域治水に関わる幅広い関係者の連携も重要と強調。二つの図を使い浸水リスクと治水効果を分かりやすく周知して、住民への理解浸透を促すとした。