法定点検義務化10年・2/高速道路各社、最新技術で修繕スピード向上

2024年7月30日 行政・団体 [2面]

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 5年に1回の定期点検が始まって以来、高速道路各社は以前よりも点検や修繕を計画的に行えるようになったと評価する。業務効率の向上に最新技術が有効とみて、高性能カメラやドローンなどを投入し対応に当たる。限られた経営資源で膨大な既存ストックを維持するには予防保全型の維持管理への移行が不可欠といえ、各社が対応に追われている。
 法改正から11年目に入り、高速道路各社は3巡目の点検に着手している。日刊建設工業新聞は、主要5社に▽構造物の点検・診断技術の導入状況▽点検義務化に伴う変化▽インフラメンテに対する課題-を聴取。状況を整理した。
 東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社は高解像度カメラや赤外線カメラなどを点検業務に導入し近接目視と同等の情報を得ながら補修すべき箇所を割り出している。首都高速道路会社は維持管理システム「i-DREAMs」(アイドリームス)を2017年から運用。阪神高速道路会社も「ドクターパト2・0」を走らせて舗装や伸縮装置の点検を効率化している。
 構造物のメンテは国と同様、「インフラ長寿命化計画」と単年度ごとに対応方針を定めた「個別施設計画」に基づき行っている。「判定区分III」(早期措置)対象の構造物を次回点検まで(5年以内)に補修するなど「メリハリのついた維持管理」を実現した。首都高速会社は、補修時に接近が困難な構造物は桁下に恒久足場を設けるなど先を読んだ対策を講じている。
 着手済みを含む「早期に措置を講ずべき状態(判定区分III)」以上の構造物の修繕状況(14~22年度累計)については、阪神高速会社が5割と回答。首都や東日本、中日本高速会社は約6割、西日本高速会社は7割弱に達した。
 中日本高速会社は「週休2日制モデル工事の標準適用」などインフラメンテで重要な役割を果たす建設会社を支援。働き方改革の推進という業界が直面する課題にも対応していく姿勢が垣間見られた。将来を見据え、劣化が軽微な段階で塗装の高耐久化を図ったり、床版を補強したりしている社もあった。
 点検や修繕効率が向上したとはいえ、膨大な構造物の更新スピードは追い付いていない。資金や人的資源が足りない中で優れた品質を長期間維持するには事後保全から予防保全型への転換を期待する声は大きいが、現実は道半ばの状況。予防保全型メンテの移行には点検や補修記録が欠かせず、地道な取り組みが求められる。