士会連合会、JIA/資格制度の在り方を議論へ、将来世代の活躍見据え

2024年8月2日 行政・団体 [1面]

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 日本建築士会連合会(士会連合会、古谷誠章会長)と日本建築家協会(JIA、佐藤尚巳会長)が、資格を巡って今後の在り方を探る動きが始まりそうだ。対象は士会連合会の「専攻建築士制度の統括設計」と、JIAの「登録建築家制度」。社会や市民に分かりやすい資格として浸透し、国際的な面を含め活用促進が求められる点で、両制度が抱える課題は共通する。日本の建築士・建築家が将来にわたり世界で活躍していく上で重要な議論となりそうだ。
 JIAの佐藤会長は6月26日に開いた総会後の懇親会で、「より分かりやすい資格制度を目指したい。他会や行政にも理解いただくことを進めていこうと思う」と表明した。士会連合会の古谷会長は日刊建設工業新聞社の取材に対し、「将来世代も考えつつ資格を今後望まれる形に見直し、歩み寄ることが必要ではないだろうか。性急に動くつもりはないが、未来のために議論を始めたい」との考えを示した。古谷会長はJIAの正会員で、登録建築家を認定・登録する建築家認定評議会の議長も務める。
 専攻建築士制度は、建築士の専攻領域・専門分野を表示する制度。統括設計やまちづくり、構造設計、設備設計など八つの専攻領域を定めている。建築士資格を取得後、専攻領域で実務経歴5年以上などを条件に認定している。1日時点で2292件の登録があり、統括設計は1693件登録されている。
 登録建築家制度は、国際建築家連合(UIA)基準に準拠した資格として位置付けている。専業で建築設計監理業務を行ない、1級建築士登録後5年以上の業務経験などが条件。1日時点の登録件数は1423件。
 両資格が生まれた背景には、日本と海外での建築家に対する認識の違いがある。日本の建築士制度はアーキテクトとエンジニアの両面を含む形で、教育も同様だ。日本は災害対応の重要性が極めて高く、実態に即した在り方となっているが、UIAや欧米では建築家(アーキテクト)とエンジニアを区別しており、教育や資格も分けるべきだという考え方が一般的。国際標準の建築家と定義が異なることが、世界で活躍する上で障壁になりかねない状況がある。
 1級建築士の中から国際的にも建築家(アーキテクト)と認められる人を区分しようと検討する中で、両資格が創設された。両資格とも当初は会員だけを対象としていたが、2009年には会員外にも開放している。
 両資格が設計コンペやプロポーザルで用いられたケースがあるものの、活用の場面は限定的というのが実情だ。実効性のある資格として、社会により活用してもらいたいという思いは両会で共通する。
 過去に相互認証や資格一本化を検討した時期があったが実現に至らなかった。だが、人口減少が加速し建築マーケットの縮小する中で、日本の建築家が海外に活路を広げる必要性は一層高まっていくだろう。将来世代を含めてより良い資格制度へと発展していけるのか--。今後の議論に注目が集まる。