法定点検義務化10年・5/国交省、記録様式見直し診断根拠明確に

2024年8月2日 行政・団体 [2面]

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 道路管理者は点検した構造物を▽判定区分I(健全)▽同II(予防保全)▽同III(早期措置)▽同IV(緊急措置)-の4段階で診断し、必要な措置を講じる。ただ橋梁では耐久性能に必ずしも直結しないさびなど外観の状態から、対応措置を判断するケースが見られ、点検の質にばらつきが生じていた。点検の記録様式に診断の根拠となる情報が残されていない事例もあった。
 法定点検の3巡目に先立ち国土交通省は3月、道路構造物の定期点検要領を改定。各構造物の診断の根拠を明確にできるよう記録様式を見直した。
 橋梁は重量車両の走行や地震、豪雨といった外部からかかる力を想定し、橋全体や構造部分ごとの耐荷性能をA~Cの3段階で評価する形式に変更した。塩害や洗掘といった部材の劣化状況の有無を記入する欄も追加。情報を所見欄に記入する手間を省き、管理者の負担を減らしつつ、必要な記録を確実に残せるよう改めた。
 国交省は道路管理者の財源や技術職員の不足に対応するため、インフラの新たな維持管理の在り方を模索している。
 複数自治体が共にインフラを管理する「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」を提唱。複数の自治体で工事を一括発注したり、一つの自治体でも部署をまたいで発注先を決めたりするなど、管理効率を高めるのが狙いだ。
 群マネの将来的な全国展開を見据え、モデルケースとなる11件(計40自治体)の事業を選定した。道路はモデル事業すべてで対象分野に含まれ、新たな維持管理手法を模索する。国交省はコンサルタントを派遣し、インフラデータの整理や事業スキームの検討、自治体間の調整などを助言する。支援を通じてノウハウを蓄積し、市町村の指針となる手引を作成する。
 定期点検が順調に進展する一方、点検結果に基づく修繕措置が未完了・未着手の構造物は少なくない。道路管理者は財源・人材不足という課題に向き合いながら、新技術の活用や発注方式の工夫など維持管理・修繕の合理化や効率化を進めている。
 インフラは平常時だけでなく、災害が発生した非常時にも重要な役割を担う。健全性を維持するためにも、損傷が顕在化する前に対策を講じる「予防保全型」への転換を急ぎ、持続可能なインフラメンテナンス体制を築かなければいけない。ストックマネジメントのさらなる充実と深化が求められる。=おわり
 (「法定点検義務化10年」取材班=編集部・木全真平、遠藤剛司、若松宏史、小堀太暉)