国交省/原寸作業時間を4割弱に短縮、鋼橋の設計と施工のデータ連携

2024年8月5日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は直轄工事で試行している鋼橋の設計データと工場製作データを連携する取り組みによって、従来2D図面を基に実際の構造物の情報を手入力していた原寸作業の所要時間が4割弱に短縮できるとの試算結果を示した。試行を通じてデータ連携時の部材定義の改善などの課題が明らかになり、その対応に2年程度を要すると想定。2026年度以降には構造が容易な鈑桁橋でデータ連携を標準化する予定だ。
 設計側で扱う「自動設計システム」と施工側で扱う「生産情報システム(自動原寸システム)」を共通のデータフォーマットで連携可能とする仕組みを、建設コンサルタンツ協会(建コン協、中村哲己会長)と日本橋梁建設協会(橋建協、川畑篤敬会長)が共同で開発。まずは鈑桁橋を対象に、▽福光・浅利道路2号橋▽四国横断自動車道津田高架橋▽笠岡バイパス入江高架橋-の3カ所の鋼橋工事で試行している。
 共通のデータフォーマットとして「設計情報属性ファイル(中間ファイル)」を用意し、設計データの納品時に変換することで工場製作データとして直接活用。従来は手入力だった作業を自動化する。試行のうち1件の検証結果=グラフ参照=によると、従来の作業時間から1割弱(約20時間)の短縮効果を確認。施工者にとっては受注直後の構造把握に有効で、3Dモデルによる自動干渉チェックなども可能になった。
 一方、試行で判明した課題を解決できれば、さらに3割程度(約90時間)以上の作業短縮が可能と試算。設計データから工場製作データに部材情報が適切に反映されるよう部材定義を改善したり、自動設計システムから中間ファイルへの出力設定を見直したりする対応は早期に可能で、ほかの試行結果を踏まえ年度内に対応する予定。中間ファイルで定義されていない部材の定義化には2年程度を見込む。
 今後は鈑桁橋だけでなく、構造が比較的複雑な箱桁橋でも橋建協を通じて中間ファイルなどのシステムを開発する予定。鋼橋の主要な構造形式で、設計と施工のデータ連携を検証していく方針だ。