国交省/道路事業の当初事業費算出手法見直し、増額要素をリストで確認

2024年8月8日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は道路事業の新規採択時に算出する当初事業費の考え方を見直す。地質調査の結果や現場条件の変化で追加措置が必要になり、計画当初の事業費から増額するケースが相次いでいる。地盤改良費用などの増額が見込まれる項目を確認できるチェックリストを作り、より正確に事業費を算出できるようにする。
 7日に社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)道路分科会事業評価部会(部会長・石田東生筑波大学名誉教授)の会合を東京都内で開いた。
 国交省によると、2024年4月時点で事業中の直轄国道改築事業428件のうち、97%で当初事業費からの費用増が発生している=グラフ参照。増加率の内訳は「0~20%未満」が54%と最多で、「20~50%未満」が20%と続く。当初事業費の倍以上となる「100%以上」に増額した事業も8%あり、当初計画との乖離(かいり)が課題になっている。
 こうした事業費の増額は、事業開始時点の未確定要素が多い点が背景にある。用地取得後に実施する地質調査で地盤の改良工事が必要なことが判明したり、地元との協議で騒音対策が必要になったりする事例も少なくない。資材価格の上昇といった要素も影響する。
 国交省は事業費の算出精度を高めるための取り組みを強化していく。過去の事業費増の事例を踏まえたチェックリストを作成。現場の条件や施工方法を確認し、必要な費用が適切に計上されるようにする。例えば土工は軟弱地盤の改良費、橋梁は掘削補助工法などを想定する。
 最新の労務費や資材単価を踏まえて事業費を算定するようにする。事業化した後も、工事着手前の調査を重点的に実施。調査結果を踏まえ道路機能に支障となるリスクやコストの増加要因を把握し、ルートや構造の見直しなど、柔軟に事業計画を変更できるようにする。
 同日の会合では、道路の新規事業の採択基準となる費用対効果の便益項目を見直す方向性も示した。現状は「走行時間の短縮」「走行経費の減少」「交通事故の減少」の三つの視点で事業を評価している。「二酸化炭素(CO2)の削減効果」や「救急救命率の向上」など、より多様な観点から事業を評価できる手法を検討する。年度内にも検討結果をまとめ、25年度の新規事業採択から適用していきたい考えだ。