清水建設/国内最大移動式タワークレーンを実証、北海道・豊富町で風車2基を施工

2024年8月9日 技術・商品 [3面]

文字サイズ

 清水建設は北海道豊富町で施工している風力発電所の建設現場に、自社開発した移動式タワークレーン「S-Movable Tower crane」(SMTC)を導入している。7~8月に国内で主流の4・3メガワット規模の風車2基を実際に組み立て、施工性能を初めて実証した。今後は施工実績を重ね、従来工法と比べ施工サイクルを短縮していく方針だ。
 SMTCは清水建設とエスシー・マシーナリ(横浜市瀬谷区、樋口義弘社長)、IHI運搬機械(東京都中央区、赤松真生社長)と共同開発し、2023年10月に完成した。陸上風車の高層・大型化を見据えて自立式タワークレーンとしては国内最高の揚程152メートル、重さは145トンまで対応する。自走式多軸台車を使い次の施工場所に容易に移設できるのが特徴で、工期や費用の圧縮を見込める。
 4・3メガワット級の陸上風車の建設では揚程100~110メートル程度の1200トンオルテレンクレーンが一般的だが、5~6メガワット級の大型風車には高さが不足している。同クレーンは世界的な風車の大規模化を受けメーカーが新造を抑えている。
 適用現場の「芦川ウインドファーム南側区画」は、ユーラスエナジーホールディングス(HD)が北海道宗谷地域に陸上風車100基以上を計画する大規模プロジェクトの一つ。南北計31基、発電出力133・3メガワットを整備する。南側区画では4・3メガワット風車15基や関連設備などを建設する。同HDグループの道北風力が発注。工期は20年4月~25年春を予定する。
 8日にSMTCを使い、ローターをつり上げて据え付ける工程を報道陣に公開した。施工したのは15基のうち10基目で、支柱の高さ82・9メートル、ローター取り付け位置の高さは85メートル。ローターは直径120メートル(ブレード長60メートル)、重量90・9トンの大きさ。
 時折濃い霧が立ちこめる小雨交じりの早朝に、SMTCとブレードの下部が接地しないように調整するもう1台のクレーン車を用いて、30分ほどかけてローラーを立て起こし上架を完了した。今回は自走式多軸台車による移設は実施しなかった。
 清水建設の太田佳佑作業所長は「ヤードが狭かったが、上架作業が無事に終わって良かった。タワークレーンの使い勝手は良く、残る工期もこのまま無事故・無災害で終えたい」と気を引き締めた。