新社長/東洋建設・中村龍由氏、意思決定を素早く将来に向け成長

2024年8月9日 人事・動静 [1面]

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 5カ年中期経営計画(2023~27年度)の2年目に入った。「1年目は成果を残せた」と評価しつつも「残り4年を考え、いかに目標達成に向けて取り組むかが第一だ」と気を引き締める。企業成長の要になる洋上風力に注力し、着床式、浮体式双方で技術開発を先行。競争力・収益力を強化し差別化を図る。「守りから攻め」の姿勢を貫く。
 --就任の抱負を。
 「ステークホルダーからの期待に応えることが重要と認識している。しっかりと中期計画を達成し上場会社として信頼される会社にする。次世代リーダーとなる社員を育てていく。受注面を見ると事業自体は豊富だが、同業他社と競い合うには、技術力向上が目標達成の要になる。経営と事業執行を分け、これまでよりも意思決定を素早く行う必要がある。社内連携を加速させコミュニケーションを取れる社内の雰囲気にし、夢や将来像を描ける会社にしたい」
 --事業環境をどう見る。
 「土木では国土交通省の港湾事業や防衛関連で期待が高まる。能登半島地震の復興にも貢献したい。建築は大型案件の受注を目指す。今後は物流施設や生産施設を中心に取り組みたい。物価上昇の課題があるため発注者と見積もり段階から話し合い、スライド条項も含め適正契約を実現したい。海外はフィリピンにリソースを集中し、さらに周辺国を狙い、欧米系企業、現地有力企業の案件にも取り組む」
 --洋上風力事業をどう展開する。
 「まずは国内最大級の自航式ケーブル敷設船の建造を仕上げる。第1ラウンド(再エネ海域利用法に基づく促進区域での事業者公募の初弾)に続き、第2ラウンドで事業者が決まり、第3ラウンドも事業化が進んでいる。関係者からの引き合いもあり、事前の検討業務など川上段階から取り組めば27年以降の実績に出てくるだろう。ケーブル敷設船の能力を評価いただき、採用いただくことで洋上風力発電所の確実な工事遂行に寄与できる。今後はO&M(運用・保守)も見込んでいる」
 --働き方改革や人材確保の取り組みは。
 「残業規制は発注者も理解している。ただ、海洋工事は気象・海象の影響を受けるため対策が必要だ。まずは工事計画を含め計画的な人員配置を行い残業時間を減らす。現場支援を主に行う『WX(ワークトランスフォーメーション)推進部』も積極的に活用する。本社側でいろいろな手法を現場に提供しバックアップしていく。担い手確保は苦戦している。認知度向上が重要ではないか。ブランディング戦略を加速させ新卒採用数を増やしたい。建設業界を魅力に感じてもらうよう試行錯誤する」。
 (6月26日就任)
 (なかむら・たつよし)1985年大阪市立大学工学部土木工学科卒、東洋建設入社。2019年執行役員関東支店長、22年常務執行役員土木事業本部副本部長、23年取締役兼常務執行役員土木事業本部長兼安全環境部管掌。最近は家族の影響で韓国ドラマを見ている。座右の銘は「以和為貴」(和を以て貴しとなす)。大阪府出身、62歳。