民間発注工事/日建連会員で上限規制対応の工期提案進む、受発注者の協議も活発化

2024年8月19日 行政・団体 [1面]

文字サイズ

 民間工事の工期を巡る日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)会員企業の対応が注目されている。時間外労働の罰則付き上限規制の適用から4カ月半。適用前からすべての工事案件で、規制を順守できる工期を提案している会員企業がいる。工期設定に関する受発注者協議が進展していることが国土交通省の調査でも浮き彫りになる中、規制に対応しながら有利に受注を進めようとする動きが出つつある。
 日建連は「適正工期確保宣言」として、規制に対応した「真に適切な工期」を民間建築工事に設定することに会員企業と取り組んでいる。
 2023年10月~24年3月を対象とした調査によると、発注者に提示した初回見積もりは、真に適切な工期に基づく工期・工程を発注者に提示した件数が8割に迫った。調査に回答した会員のうち、22社はすべての案件を対象に同工期を提案していた。
 日建連のある幹部は「しっかり対応できている」と状況を受け止めている。期間中の初回見積もりについては、さまざまな理由もあって契約に至らなかった案件が半数を超えたものの、会員企業には「(規制適用の)24年問題を(発注者も)知っており、理解を得やすい」「ゼネコンの意見を聞き入れて事業計画を行う風潮にある」といった認識も広がっている。
 国交省が民間工事を対象に受発注者双方に行った働き方改革に関する調査では、1月1日時点の状況として、当初契約時の工期設定について「注文者と協議し受注者の要望も受け入れられることが多い」という元請業者などからの回答割合が前年度の53%から63%に上昇していた。「協議を依頼しても応じてもらえないことが多い」が13%から7%に低下し、工期に関する受発注者双方の協議が活発になっていることを裏付けた。
 規制を順守する工期の提案が増え、発注者の向き合い方も変化する中、日建連サイドには「発注者と共になら工期を短縮する余地はある」(幹部)という考えは根強い。新技術やDXの実装に各社が前向きで、現場作業を効率化するための「工程の合理化」や「工法変更」については、国交省の調査でも提案に力を入れる受注者の割合が増えていた。
 規制を順守する工期を前提としながら、技術力と事業のマネジメント、現場の創意工夫などによって、「どう最適な提案をするか」(別の幹部)が受注の成否を左右する。上限規制に対応する働き方改革と受注競争力の強化を両にらみした動きが続きそうだ。