岐阜県/MS制度の取り組み広がる、高校生にも委託・土木への関心深めるきっかけに

2024年8月19日 行政・団体 [7面]

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 岐阜県は、安全・快適なインフラを維持するため「社会基盤メンテナンスサポーター(MS)」の取り組みを推進している。講習を受けた県民から、日常的に利用しているインフラの異常箇所を報告してもらう仕組みで、2009年度にスタートした。現在は工業高校の生徒にも委託し、インフラ整備について関心を深めてもらうきっかけとしても役立てている。
 道路統計年報2022によると、県管理のトンネル延長は全国1位、トンネル数は6位、道路延長は11位、橋梁(15メートル以上)数は4位。膨大な数のインフラを管理しており、老朽化への対応とともにメンテナンス費用の抑制が求められる。
 このため県は、可能な限り小まめに、多くの人の目で定期的に施設を点検するため、土木職員のパトロールに加えMS制度を活用している。MSとなるために特別な資格は必要なく、講習を受ければ活動できる。講習では路面、路肩の段差やひび割れ、陥没といった点検する際の着眼点など基本的な知識を学ぶ。
 県は、委託活動とともにMSとなった後のフォローアップ研修も定期的に実施。スマートフォンからオンラインで手軽に点検報告できるようにするなど、制度の改良に取り組んできた。その結果、MSは4月時点で1581人まで拡大。一般の通報と比較し、早期の補修などにより事故の未然防止につながる情報提供の割合が高いという。
 15年度の飛騨高山高校を皮切りに、工業系の高校生にも委託し、インフラ整備について関心を深める機会にもつなげている。昨年度までに岐阜工業高等専門学校など4校で実績があり、本年度は7月5日に可児工業高校、同11日に岐阜工業高校で、MSとなるための講習会が開かれた。
 2年生18人、3年生18人が新たにMSとなった岐阜工業高校の講習会で松野雅充土木工学科主任は「土木は社会貢献度の高い仕事。MSとなることで、学んだことが実際に社会の役に立つことを経験してほしい」と話した。大堀健一岐阜土木事務所道路調整官も「健全なインフラの維持のためには、より多くの目で見ることが大切。土木への関心を高める機会になってほしい」と期待を込めた。委託された生徒の一人は「通学で普段から何げなく道路を利用しているが、MSとなり違う視点で見るようになるかもしれない」と話した。9月には岐南工業高校でも講習会を開く予定。