いであ/高輝度放射光施設で研究へ、生命科学分野皮切り新たな価値創造へ

2024年8月21日 企業・経営 [1面]

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 いであは、東北大学青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)に整備された世界最高水準の高輝度放射光施設「ナノテラス」を利用した研究に乗り出す。太陽光の約10億倍にも及ぶ非常に明るいX線で物質を照らし、従来は観察できなかった物質の構造を可視化する「巨大な顕微鏡」と言われる施設。強みとする健康・生命科学分野から活用を始め、新たな価値創造につなげる。幅広い産業分野で利用可能性があるとみており、外部パートナーとも積極的に連携していく。
 同施設は、量子科学技術研究開発機構(QST、小安重夫理事長)や光科学イノベーションセンター(PhoSIC、高田昌樹理事長)、宮城県、仙台市、東北大学らが官民で整備し、4月に稼働を開始した。放射光とは、加速した電子ビームを磁石で曲げた時に放射される非常に輝度の高い電磁波のこと。同施設は高輝度の軟X線により、物質の機能に影響を与える電子状態を可視化できる。物質の電子状態や化学状態の解析に強みがあるとされる。
 同社は有害化学物質分析や健康リスク評価、遺伝子解析に関連する技術開発に注力しており、こうした分野への応用を目指す。このため年間最大200時間使える1口(10年間5000万円)の利用権購入を2019年に決定。全て成果を専有して利用できる会員となっている。
 例えば、水中の有害化学物質が生物に取り込まれた場合、体内に存在していることは分かっているが、状態変化や体内での動態メカニズムは解明されていないことが多い。ナノテラスを用いて、有害化学物質が環境中にどのような状態で存在し変化していくのかを把握して、解析や対策立案などに活用するイメージだ。初弾では、マイクロプラスチックの表面に付着した有害化学物質を調査する方針で、年内の開始を予定する。
 東北大らはナノテラスを活用する利用者らと連携したイノベーションエコシステム形成にも力を入れている。田畑彰久社長は「自社の研究を進めることはもちろんだが、エコシステムに入る意味が大きい。オープンイノベーションの大きな入り口になる。共に社会貢献していくパートナーと共同研究していきたい」と話す。