国交省有識者会議/新技術実装へ国発注事業で先行活用を、設計時から導入促す手法も

2024年8月29日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省所管分野の技術政策を検討する一環で、特にインフラ整備・維持管理の関連技術の社会実装を加速化する方策を議論してきた有識者会議が提言となる「中間取りまとめ」の案を示した。国が民間を支援する立場から一歩踏み出し、より主体的に技術開発をけん引していく姿勢を見せる必要性を強調。単純なコストだけでなく総合的に価値の高い技術開発を強力に誘導し、国が発注するプロジェクトで新技術などを先行的に活用する仕組みを構築すべきだと提案した。
 社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)・交通政策審議会(交政審、同)技術分科会技術部会の下に設置した「分野横断的技術政策ワーキンググループ(WG)」を28日開いた。過去3回の議論、農業や医療など異分野からの話題提供を踏まえ提言を整理し詰めの議論を行った。
 技術の研究・開発から実装までの一連のプロセスを念頭に置き▽国による技術開発の一貫した力強いけん引▽研究・開発の投資の強化・効率化▽社会実装の円滑化・加速化-の三つの方向性を提示した。
 あるべき姿として国がインフラの強靱化や脱炭素化などの政策目標と技術開発のニーズをまず明確化。その上で、民間にはリスクが高く困難な技術開発も複数年のスパンで支援する。国が率先しプロジェクトベースで先行活用する仕組みもつくる。研究・開発段階では大学やスタートアップなどの異分野企業との連携を強化。得られた成果を可能な限り産業全体で共有する「協調領域」も検討する。
 実装段階では総合的に価値の高い素材や構造、工法などを設計時から採用できるよう、適切な評価手法や実態に即した積算基準を整備。人的・社会的コストも考慮した技術のコスト評価や、新技術を前提にした効率的な施工管理・検査の仕組みを検討する。設計・施工分離の考え方を改め、ECI方式を拡大するなど設計時から新技術を導入しやすい調達方式に転換。標準的な設計ではない技術選定を促すため、品質や性能を担保する第三者認証の導入などのアイデアを示した。
 WGは年度内の最終取りまとめに向け議論を継続し、その成果を2025年度内の策定を目指す次期「国交省技術基本計画」に反映する。