建築学会/全国大会で能登半島地震報告会、複合的な被害が特徴・実務に生かして

2024年8月29日 行事 [2面]

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 日本建築学会(竹内徹会長)は28日、東京都内で開催中の2024年度全国大会で能登半島地震に関する災害調査報告会を開き、現在までに得られている調査結果を発表した=写真。塩原等氏(東京大学名誉教授)は趣旨説明で「中間的な報告になるが、工学で不足している点や明日からの実務にどう生かすべきかを考える機会にしてほしい」と呼び掛けた。大きな地震が連続して発生していたことによる影響への見方など詳細な分析が求められる状況も浮き彫りになった。
 須田達氏(金沢工業大学教授)は、甚大な被害を受けた地域で実施した約6000棟を対象とする悉皆(しっかい)調査結果や被害概要を報告。地震だけではなく、津波や火災、液状化など複合的な被害が生じている点などを特徴に挙げた。デジタルツールを取り入れたことも紹介し、「車載カメラや空撮の技術を事前に準備して、ルール作りをしておき、災害時にスムーズに調査に入れる準備が必要だ」と指摘した。
 被災地では22年6月と23年5月に比較的大きな地震が起きた後、今年1月に能登半島地震が発生している。連続して地震が起きたことによる被害拡大への影響への言及があった。
 地震や地震動の概要を発表した境有紀氏(京都大学教授)は、23年の地震の影響はないという解析結果になったことを紹介し、「影響があったというには分析が必要だが、見いだすことができなかった」と述べた。須田氏は「見た目からは被害の拡大につながっていると思う」としつつも、「工学的に判断を加えて、本当にどこで壊れたかは分析が必要だ」と語った。
 基礎構造の面から柏尚稔氏(大阪大学教授)は「人命を失うことを防止できたことは目標の達成と言えるのかもしれない」と述べるととに、「使えなくなった時にどうするのか。性能をどう考えるべきかが非常に大事になると思う」との見解を示した。