関東整備局利根川水系砂防/関東直轄砂防初の自動化施工、浅間山火山防災で検証開始

2024年8月30日 技術・商品 [5面]

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 関東地方整備局利根川水系砂防事務所が、浅間山火山防災事業で自動化施工を進めている。国土交通省のi-Construction2・0に準じた取り組みとして現場実証を実施。28日に報道関係者に現場を公開した。浅間山北麓の地蔵川第一砂防堰堤(群馬県嬬恋村)の現場で、堤体の素材となるソイルセメントをプラントから施工場所まで自律稼働のキャリアダンプで運搬する実証実験を行った。関東管内の直轄砂防事業で自動化施工に取り組むのは初めて。
 工事名は「R6地蔵川第一砂防堰堤工事」。施工は渡辺建設が担当。自動化施工に当たり大林組と日立建機日本が協力している。
 自律して動くキャリアダンプの管理には、大林組が開発した建機制御システム「建機フリートマネジメントシステム(建機FMS)」を用いた。建機FMSはタブレット端末上で建機の位置をリアルタイム表示できる。建機と建機FMSは屋外用の5ギガヘルツ帯ワイファイ(Wi-Fi)で接続している。インターネット接続が不要のため、砂防のような山岳部の現場でも問題なく稼働するという。
 ダンプ自体にもレーザーで対象の形状を検知するLiDAR(ライダー)やGNSS(全球測位衛星システム)などのセンサーが搭載され、あらかじめ建設現場を走行しておくことで建機自ら3D点群マップを作成。自律稼働中は建機自身が3D点群マップとLiDARが取得する建機周辺の3Dデータを照合し、自己位置を把握するSLAM技術を導入している。
 ダンプが有人バックホウなどに近づいたり、積み込み後に発進したりする時は、作業員がボタンを操作してから動き出すよう設定し安全性を確保した。建機FMSは通信容量が持つ限り建機を同時コントロールできる。実証フィールドでは作業員1人で10台を管理できたという。
 同事務所は今後、噴火時の緊急工事を想定し、従来取り組んできた遠隔施工と今回の自動化施工を比較検証。コストや迅速さ、施工性などを考慮し、より火山防災に親和性の高い手法の導入を検討する。