国交省/国管理の全109水系、25年度末までにAIでダム流入量予測

2024年8月30日 行政・団体 [2面]

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 国土交通省はAIを活用してダム流入量の予測精度を高める取り組みについて、2025年度末までに国管理の全109水系に導入する方針を固めた。事前放流の判断精度を高めるとともに、水力発電による発電量を増やし、ダムが持つ治水と利水の機能を最大限に引き出す。25年度予算の概算要求に関連経費を盛り込んだ。
 AIに過去の流入量と降雨量のデータを学習させ、雨量を入力すると、流入量をAIが予測するシステムを導入する。流入量は土壌の乾燥状態や、雨の降り方といったさまざまな要因に左右される。従来の算出手法とAIを同時に活用することで、より高い精度で流入量を予測できるようにする。既に国管理の26水系で導入済み。民間による技術開発も活発になっている。
 ダム流入量の予測精度が高まれば、治水と利水の両面でメリットが期待できる。治水面では、水位を事前に下げて貯留可能な水量を増やす「事前放流」が必要かどうかの判断精度を高められる。放流を行う場合も、水位の回復量を見通した上で、無駄の少ない放流量を設定できる。水位が安定すれば、水力発電による発電量も増えるため、ハイブリッドダムなどの利水ダムへの恩恵も大きくなる。
 政府は「水災害による被害の最小化」と「水の恵みの最大化」の両立を目指す方針を打ち出しており、AI予測システムはその両面で有効な施策になる。国交省は25年度末までに、国管理の全109水系にシステムの導入を拡大したい考え。活用の事例が広がれば、都道府県管理の2級水系への導入も期待できると見ている。