回転窓/天下の回り物の価値

2024年9月3日 論説・コラム [1面]

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 新しいデザインのお札が発行されて2カ月。財布の中には新旧デザインのお札が混在するようになり、店舗での支払時にどのお札を渡せばいいのかと一瞬戸惑ってしまう▼肖像をはじめとするお札の様式は財務省、日本銀行、国立印刷局の3者で協議し、最終的には日銀法に基づき財務大臣が決定する。同局のウェブサイトによると、日本初の肖像入りのお札は、1881(明治14)年に発行された「改造紙幣壱円券」。古代神話に登場する神功皇后が描かれた▼肖像の選び方に法令等の制約はないが、なるべく精密な写真を入手でき、品格があって国民各層に知られ、その業績が広く認められている人物だとか。肖像の採用は、顔や表情のわずかな違いにも気が付く人の目の特性を利用した偽造防止も理由の一つ。現在のお札は明治以降の人物から選ばれている▼世の中はキャッシュレス時代で電子マネーの利用が常態化し、現金を使う機会は減りつつある。それでも現金の持つ価値はデジタルのものより重く感じる▼金は天下の回り物-。人の間を巡る紙幣・貨幣を対面で受け渡すことで、お金の大切さや稼ぐ苦労も実感できよう。