首都圏で中温化合材の製造量増加、脱炭素の広がり背景に/日合協調べ

2024年9月4日 行政・団体 [1面]

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 首都圏を中心に環境負荷を低減できる中温化アスファルト合材の製造量が増加している。日本アスファルト合材協会(日合協、今泉保彦会長)の調査によると、2023年度の全国の中温化合材製造量は前年度比170・6%増の58万7388トン。うち約半数を関東の1都3県が占めた。カーボンニュートラル(CN)実現に向け官民とも発注者の環境意識が高まり、中温化合材を通常の合材と同様に活用する動きが広がっているようだ。
 日合協が会員以外の工場を含む23年度の「アスファルト合材統計年報」と同時に調査した。対象は全国の1020工場(うち日合協会員880工場)で、973工場が回答した。回収率は95・4%。
 中温化合材は施工温度が通常の合材と比較して30度程度低い合材。低炭素アスファルトとも呼ばれる。加熱に必要な燃料消費量が減少するため二酸化炭素(CO2)排出量を削減でき、低炭素化技術として近年注目されている。
 23年度の中温化合材製造量を工場が立地する都道府県別に見ると、首都圏での製造量が突出している。東京都が12万5853トン(前年度比1216・9%増)で最も多く、北海道の8万6329トン(738・0%増)、神奈川県の8万4741トン(258・8%増)、埼玉県の5万1387トン(825・4%増)、千葉県の3万9527トン(2202・1%増)と続く。12県では製造実績がなかった。
 中温化合材は温度が低下しても施工できる。このため、北海道では施工性を改善する目的で冬季などの工事で積極活用されている。
 首都圏の増加は東京都の発注工事で中温化合材が活用されていることが要因と見られる。東京都の製造量を発注者別に見ると「都道府県」が約85%を占めた。都は22年度の発注工事で中温化合材を通常の合材と同様に使えるようにした。これまで中温化合材の使用に必要だった事前の試験を省略した。
 日合協によると中温化合材を通常使用できる地方自治体は東京都だけという。近隣3県は使用実績があるものの、使用に当たっては事前の協議などが必要となる。都と同様に通常使用できるよう制度の見直しを検討する自治体もある。東日本高速道路会社は6月策定の「CN推進戦略」に中温化合材の標準化を目指すと明記した。
 23年度の合材全体に占める中温化合材の割合は1・6%にとどまる。だが脱炭素化の広がりを背景に「今後は中温化合材と通常の合材の比率が逆転する可能性がある」(日合協)と見られる。