大林組/未来の養殖と漁場の創生構想、大阪湾に拠点整備し挑戦

2024年9月5日 企業・経営 [3面]

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 大林組が、気候変動や周辺環境への影響を考慮した未来の養殖と漁場の創生構想「大阪湾おさかな牧場」に挑戦している。同社技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」の一環として、広報誌『季刊大林』(63号)で取り組み状況を報告した。大阪湾の湾内、湾外、沿岸の3拠点を整備し、魚種ごとの生態や成長段階、季節に応じて成育場所を使い分ける。養殖施設の周囲に藻場も設け、養殖施設から出る栄養塩を藻場に適度に供給。二酸化炭素(CO2)の吸収につなげる。
 湾内で基本となる施設は、施工や安全管理のしやすさを考慮し、養殖池、富栄養池、藻場で構成する養殖施設で100メートル×200メートルのユニット。2カ所に配置された養殖池を8区画に分け、多品種を養殖する。養殖池に沈殿したえさやふんなどは、回収して水処理装置で低分子化し、窒素やリンなどの無機物に分解する。富栄養池に送り出し、栄養塩として有効に活用する。
 湾外は湾内に比べ外洋に近いため、魚の残餌(ざんじ)や養殖から排出される栄養塩の海への拡散性や浄化能力が高い。養殖エリアから出た栄養塩を含んだ水を藻場に供給するシステムを構築する。沿岸牧場は陸上施設、沿岸に造成する富栄養池、岩礁藻場で構成する。
 担い手不足の解消や生産性向上を目的に、ICT、AIなどスマート技術を活用。給餌(きゅうじ)や収穫などの作業はロボットが行う。魚介類の成長データや給餌量、餌コストなどをデータ化し、効率的で安定的な養殖業を実現する。
 給餌、魚の選別、収穫など従来、人が行っていた作業はロボットが担う。給餌では、魚の状態や餌の食べ具合によってAIがその時々の適量を判定し、無駄な残餌を極力出さない仕組みを構築する。
 同構想は、日本の多様な水産物を文化的な価値も含めて継承する役割が強い。効率重視の単品目による大規模養殖ではなく、地魚を含む多品目の魚種を特性に合わせて育成・提供することで大阪府の消費量の8%を賄えるという。