土木学会/仙台市で全国大会全体討論会開く、奥深い風景づくりテーマに

2024年9月6日 行政・団体 [10面]

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 土木学会(佐々木葉会長)は2024年度全国大会の一環で、全体討論会を仙台市青葉区の仙台国際センターで4日に開いた=写真。「奥深い風景づくりとインフラ(復興からの学び)」をテーマに、これからの世代に求められる風景づくりを議論。土木インフラの大量生産向け規格化・「コモディティ化」の中で廃れた技術や価値を人口減少社会下の視点で再評価する動向などを語り合った。
 全体討論会には▽真田純子東京工業大学環境・社会理工学院教授▽林千晶Q0(キューゼロ)社長▽久田真東北大学大学院工学研究科教授、同インフラ・マネジメント研究センター長▽平野勝也東北大学災害科学国際研究所、大学院工学研究科土木工学専攻准教授▽西村拓東北地方整備局長-が登壇。奥村誠東北大学災害科学国際研究所、大学院工学研究科土木工学専攻教授がコーディネーターを務めた。
 次世代の風景づくりについて、地域のデザイン経営を手掛ける林社長は「人と自然の奥深い風景の前提として、土木インフラが地域にウエルビーイング(幸福)をもたらせるかが重要」と説明。東日本大震災からの宮城県女川町の復興まちづくりに携わった平野准教授は「インフラはユーザーと話し合って造る時代だ。地域の意識を高め対話に時間をかける必要がある」と説いた。
 中山間地域の棚田や農地などで見かける「石積み」を昔ながらの空石積み工法で修復している真田教授は、近代土木技術が普及する過程で見捨てられた自然材料を使う技術や工法を後世に伝えようとしている。規格化されていない「『石(材料)が技術を選ぶ』面白さややりがいがある」と語った。
 石積み修復の説明は「人口増時代に整備された巨大インフラの管理手法を過疎地域にも均一に適用してよいのか」「地域のエンドユーザーがある程度メンテナンスする方法もありうる」などの議論に発展。林社長は「人口減社会では生協(コープ)のように中間的な組織が大事になる。各地域で積極的なリーダーが(新たな方法を)実践することでルールが変わっていく」と指摘した。
 西村局長は管内のインフラ整備・活用方針やストック効果などを解説。「これまでも地域との連携・対話を重視してきたが、より学んでいく大切さを認識した。土木の重要性を一般にも強く発信していく」と述べた。
 平野准教授は「頑張ろうと思っている地域の背中をどれだけ押せるかが土木技術の未来を決める。(不合理な)ルールや制限を超えていける人材をつくるのが大事だ」と強調した。久田教授は「人口増大社会は大量生産のために技術を単純化した時代。過去を振り返り、当時捨てたものを拾い上げることが新しい技術にも役立つのではないか」と期待を込めた。
 奥村教授は「インフラや風景はそこに住む人の生活を形づくるもの。地域に馴染み、どう使われていくか地域と共に考えていこう」と総括した。